泥水もあたためれば湯気になる からだの奥で水着は乾く #短歌
安い靴 軽くて今日は遠くまで行けそうな気がしてしまう午後 #短歌
届かない前提として書く文字のすべてがキミの顔になってく #短歌
時刻表 読んでからまた振り返る 柄じゃないこと君に似ていて #短歌
ティラミスの粉が灯した文の底 磁石に寄る午後のしずけさ #短歌
行く先の空がひらけて笑い声 エンディングだけ胸に残して #短歌
懐かしい兄貴のハガキ夏の空 変なシャツで胸が揺れてる #短歌
カップ越し「まだ暗いね」と言う声は街灯よりも遠くにひびく #短歌
大熊猫(パンダ)にもひらがなあげたい 口に出せば たろうたろうとにじむ舌先 #短歌
はじまりと別れがまざる朝だから羽根をひとつぶ光にかえた #短歌
温い風ほほえみ溶ける夏の空ふらふら遠く心が逃げる #短歌
変わらずにあることのなかに座ってる遠くの席の知らない誰か #短歌
箸先でつかまえきれぬ刻ばかり お茶漬けの海苔 小舟のように #短歌
映画館 行かぬ足音やわらかく雲を渡って帰るひとの目 #短歌
降りつづく名もなきかけらすりぬけてわたしの影は森にまぎれる #短歌
果てしなく部屋を巡れば足もとの影が「ん」と鳴る夜の孤食よ #短歌
どこだっけ このへんだった気がする夜 自販機だけがやけに親切 #短歌
名を呼べば半歩遅れて返る声 夕映えの中寄り添うかたち #短歌
透明を切り裂いたあとひと呼吸 陽射しが高く軋む遊具に #短歌
肩越しにつり革揺れてその下で小さな鼠駅を待ってる #短歌
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