左に寄ってくれたままのトラクター 誰かの人生だったかもしれず #短歌
ずっと前から死ぬつもりだったのに波がきれいで手をほどけない #短歌
室外機がいちばん暑がってる午後 わたしはただの飴になりたい #短歌
傘の先で夜をつついた どこからか花火 だれにも見せない顔して #短歌
まいにち見てるあの屋根が昔は声に似てたんだって言ったら笑う? #短歌
かすかなる罪のとなりでくちずさむひとつも知らないままの讃美歌 #短歌
色褪せた看板のなかで笑ってるわたしにだけは見えているきみ #短歌
飛ぶこととつながることはちがうけど凧はすなおに風を選んだ #短歌
大切なものって言われた 見えないのならずっと目をそらしてもいい? #短歌
シチュー煮る湯気の向こうに母がいてCMだけが知ってる幸せ 短歌
泣くということを共有しないまま「そうだね」だけで過ぎていく夜 #短歌
ふりかえるたびに増える星の名を忘れるために空を見ている #短歌
ねえきょうはあなたの運勢すごくいい だってわたしが見つけたんだもん #短歌
だれの声だったか忘れた励ましを耳に貼りつけて夜を歩くよ #短歌
小さくて見えないところから血が出るのたぶん言葉が当たったせいで #短歌
教科書の水色はもう信じない 飲んだときだけ知ってる温度 #短歌
広げてもいいよ この部屋せまくないしね 羽根のかたちかわいいね ちゃんと #短歌
花の蜜を吸って歩いて吸ってまた 名前を呼ばれた気がしたけれど #短歌
熱さめて眠る子のそば息そっと母は夜ごとに星を動かす #短歌
もう誰も呼ばれないままのグラウンド タイヤだけまだあざやかにいる #短歌
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