夕餉には赦しがまざる味がして十一番目の祈りを唱う #短歌
忘れられた野菜が一つ息をして祈るみたいに冷気をまとい #短歌
ずれてゆく心の針を戻すたび君のためにも歌でありたい #短歌
忘れるたびに人生が少しずつやさしくなると信じていました #短歌
「きみのこと見てる」と言われ見られたのはわたしの奥の誰かでした #短歌
ふりかえるための名前が消えていて最寄りの駅がやけに遠いな #短歌
いくつでも岸は選べるきみだから飛ぶときさえも風がやさしい #短歌
なんとなく火を弱めたらぐずくずと鍋の中心から腐りだす夜 #短歌
もうだれも叱らない日の記憶にはグリーンピースの青さが残る #短歌
わすれても平気なことが多すぎてカバンの中が少し広いまま #短歌
あのころのままってことはないけれど閉じればそっと息をしていた #短歌
数えることしかできなかった日々をいま 正の字だけがきれいに並ぶ #短歌
接続語ばかりつなげた手紙には届かぬままのさよならがある #短歌
一列に並ぶのが下手な駐輪場 自分のだけがちゃんとこちら向く #短歌
ピアノからこぼれた悲しみだけ残り冷めゆく紅茶に音がささった #短歌
ふと思う 透明なことばかり好きできみの影だけよく見えている #短歌
少しだけ泣きたくなる色でした 名前のある色ばかりこぼれて #短歌
しゃがんでも空があること知っていてローファーのまま息を吸い込む #短歌
窓になるまえのやさしい無音です 通りの花も知らないままで #短歌
流行語みたいな静けさを連れてくる崩壊という二文字のかげ #短歌
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