運動会 祖父が間違えて持たせた鈴をいまも押入れで鳴らせずにいる #短歌
祖父の葬式の空にも鳴いていた 着色された魂のようなやつら #短歌
発芽から腐敗までの実をすべて運命と呼ぶことにした 短歌
弾けた実を潰した音が旨に似てふたりの距離は果汁のなかへ #短歌
大粒の水玉になったつもりで父のかたわら 点滅の青 #短歌
つぶしたあとで知る本気度 あいつけっこう吸ってたうちらの血 #短歌
「帰る」とはたいてい旅の途中です 髪に挿してた鍵を抜きつつ #短歌
なくしたと思っていた鍵が見つかりいまさら開けるドアもないまま #短歌
何度でもしょうもない話をしたあとにあさりの味噌汁ふたりですする #短歌
わたしの目を見て首をかしげる猫に失業保険の話を始める #短歌
夏だねと発しただけで走ってくる犬 かつて飼ってた名もなき恋だ #短歌
洗っても残る赤いしみだけがその日のやさしさを教えてくれる #短歌
蜂蜜の通るルートを犬も見る パンも俺らもやがてはカビる #短歌
靴を履かぬ自由などもう無いのか 駅前の銅像さえスニーカー #短歌
アタリじゃないのはわかっていたけど口に入れたら少しだけ甘かった #短歌
謝罪とはなめらかであるべきなのだ 蜂蜜のようにしみる言葉で #短歌
いちばんやわらかい部位を沈黙にあずけたときは水音が降る #短歌
捨てられる理由みたいに切られゆく前髪のなかのあのキスの味 #短歌
この世など余白にすぎずブレーキの跡が未だに胸にあるだけ #短歌
襟元に残った赤の小ささよ まだ甘くしてどうするつもり#短歌
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