くちびるで吹くようにして風を売る 風鈴屋には空の在庫が #短歌
放課後の規約違反で基地完成 燃えやすいやつから灯してゆけ #短歌
鳴きつづける理由を持たぬ個体です 提出義務は地上にないと #短歌
火は禁じられているけれどこの紙面は燃やしている途中 #短歌
からびんをひかりと名づけ飲みかけのまま誰かの背中にわたしてしまう# 短歌
規格には適合したとみなされる 目を開けたなら靴が下にある #短歌
千枚のレンズを通るゆうぐれにひとつぶだけのわたしが見える #短歌
ひかりにも濡れてしまう日 わたしよりながく使った傘がゆれてる #短歌
口ひらく夢をみていた夜だった 鋏は少女の名前をもって #短歌
列のなか くるぶしにだけあるヒミツ 鞠が知ってるわたしの順番 #短歌
すべてが融けるまでは喋らない 赤い器に物語が眠る #短歌
ふたを開けきらきらの湯気の無効からあの子もたしかに笑っていたの #短歌
花が散るように暮らしを置いてきた わたしたちはもう呼ばれない声 #短歌
ふくらんだ息の向こうの青年にまだ誰にもなれないまま触れる #短歌
手紙など書かずにすんだチライからわたしはそっと名を消している 短歌
名をもたぬものがこぼれる車内には書家の忘れた筆跡の跡 #短歌
日かげより日なたを選ぶ女のかたち 母の隣に影をふたつぶん #短歌
生体を包む皮膜としての布 靴という概念の中に立つこと #短歌
ひらかれてしまった小箱 そらのいろ いまさら過去が泣いている午後 #短歌
ひとつぶの塩をひとさじ確かめる 夕餉のころに咲く躑躅 #短歌
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