6月14日金曜日。
朝9時過ぎに家を出て鎌倉駅へ。
大船駅で東海道線熱海行きに乗り換える。待ち時間6分ほどの間に新幹線の自由席券を買ってホームに上がったらすぐに「こだま号」が到着。
10分か15分走っては駅でのぞみとひかりの通過待ち、という各駅停車だ。
静岡駅で通過待ちの間に、iPhoneで今宵泊まる岐阜市のホテルをざっと探し、とっとと決めた。当日宿泊割がどこのサイトでも見つからず、更にチャレンジしてみようと思っていた風呂トイレが共同の「ドヤ」は消えていた。それなら駅から近くのビジホでいい。なぜかこの日の金曜日は前日と比べてどこも2千円ほど高い。現地に入って理由がわかった。東海地区のインターハイが土曜日に開催されるため、駅前のホテルはどこもほぼ満室だったのだ。運が悪い日を選んでしまったものだ。
豊橋駅で新幹線を降り、豊橋市民のソウルフード店だとされる壺屋で「とて丼」。ホルモンとコンニャクを赤味噌で柔らかく煮込んだ丼。はらわたに染み入る八丁味噌の甘辛さだ。あとでめちゃ喉が渇くワケだが(笑)。
東海道線の新快速で一路岐阜駅。名古屋ではなく豊橋で乗り換えたのは、千円ばかり特急料金が安くなるためだ。時間は30分ほど遅くなるが、今日は中古車店で残金を支払って契約を済ませるだけなので、倹約第一。
岐阜駅で中古車店に電話をして迎えに来ていただく。その間を利用して、ケーキでも買おうと考えていたのだが、観光協会のお姉さんに訊いてみたところ、駅ビル内に一軒あった洋菓子屋がなくなったと言う。
仕方なく偶然見かけたミスドでドーナツを5個買った。手土産に鎌倉名物の缶入り「鳩サブレー」を持参してきたので、このくらいでいいかと判断した。それがあとあと、えらいことになるとはこの時点では思ってもみなかった。
中古車店は駅から6キロほど。早々にお迎えに来ていただき、ありがとう。
着いて、あらためてクルマをあちらこちらから見た。乗り込んだら塵ひとつ落ちてない。
残金を払いながら、いろいろとお話をうかがったり、懇切丁寧なアドバイスを受けたり。鎌倉に戻ったら自分で陸運局に行って、ナンバープレートを岐阜から横浜に替えなければいけない。
ずっと和んだ気分で雑談をしていた。店内には柴犬のモモちゃん(メス)がいて、人なつっこい。頭を持ってひねってみたり、足を開かせたりと、まるで幼児のようないたずらをして遊んでた。
今晩はホテルにチェックインしてから駅近くで味噌カツ定食を食べるつもり……などと話すと、たまたま店に来ていた親戚の女性がパソコンで味噌カツ屋を探してくれた。
その女性(推定39歳)、なんと今日が誕生日だそうだ。彼女は私の買ったクルマの室内を今日、掃除したとも言う。
で、中古車店の店主夫妻、誕生日のその女性、私の4人で、岐阜ではもっとも高級な肉料理レストランへ行こう、という急展開になった。
ホンマかいな。たぶん私に対しても”奢り”だろう。もともと私は食べることに大きな執着がないので、1200円の味噌カツ定食で十分だし、今夜は翌日の長距離ドライブに備えてゆっくりとホテルで休みたかった。
店主ご自身がレストランに予約電話をし、6時を少し回ったところで店を出発。
着いて入店したら内装がシックなレストランだった。白い壁が油とタバコで薄汚れ、押しピンで「味噌ロースカツ定食 1300円」「味噌ヒレカツ定食 1500円」などという手書きのメニューが貼り付けられた店とは対極だ。
厚さが3センチのカツ? 俺、食えないぞ。
みんなで少しずつ違ったメニューを注文し、テキトーに食べながら楽しい会話をした。
誕生日を迎えた女性は、「もはや誕生日はもっともめでたくない日」と笑っていたから、不惑を超えてしまったのかな。
この3月に仕事をやめて失業中とのことだが、店主いわく「親の遺産1億円を引き継いだお金持ちだから余裕綽々」などと笑っている。
彼女は、遺産で手にしたのはその半分の半分の額、とマジで弁解していた(笑)。
夜8時前、ホテルの前まで送ってもらった。
スマホは小さな画面ゆえ、ホテルの外観もインテリアも見ずに選んだ。
一階二階三階には”テナント”が入っている雑居ビルで4階から上がホテル。一階は半分が吹き抜けで、そこに客引きや黒服らが集ってる。なんだか歌舞伎町にあるホテルみたいで、田舎者の私はワクワクする。チェックインしてリュックを置いたら、ホテルのあるブロックを一周してみよう。
フロントは20代の女性2人がいたのだが、共にメイクが濃くてなんだか怪しい。フロントの仕事時間が終わったらキャバクラへバイトに行くの? と私は問い詰めたい、真実が知りたい。しかし、会食疲れでなるたけ喋りたくないため、訊かなかった。
室内は綺麗だった。歯を磨いてカツを入れ、すぐに夜の街歩き。
JR、名鉄とも岐阜駅からすぐそば。名鉄駅前で女性のストリート・ミュージシャンが、のびやかな声で歌っていた。3曲くらい彼女の目の前に立って拝聴したのだが、目が私と合いそうになると外した。真っ直ぐな視線で聴衆を見つめるタイプ。こういう人は売れたら大物になるんだけどなぁ。若ければ若いほどいい、というのが日本の音楽業界ゆえ、30歳前後に達した彼女のような女性シンガーは不利。一発逆転、YouTubeを活かして成功して欲しいな、「♪逢い〜たい…」というリフレインが鬼気迫る感情表現で訴求力十分だった。この歌、ヒット曲のリカバーなのだろうか?
そのあと、すぐそばの大型スーパーで八丁味噌2袋を買って、ホテルに戻った。
河崎秋子の短篇一本を読んでベッドに入った。
が、想定以上のクルマを買えた喜びと、明日鎌倉までドライブする不安とで、睡眠薬がまったく効いてくれず。20分くらいして再びクスリを服む。こういうこと、ダメなんですけど。
眠ることは眠れた。
が、早期覚醒をしてしまって、苦しんだ。
(この項、続く)
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