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2024年03月21日14:40

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ウツの半歩手前

 ウツ症の半歩手前、といったバイオリズムの谷にいるのだろう。
 しかし、ルーティンをこなす程度の気力はある。先週末は横浜へ出向いて市民運動の定例会議に出席して活発に発言をしたし、掛かってきた電話に面倒がらず対応しているし、読書量に至っては日記を書かない分、普段の3〜4割増になった。心神耗弱という言葉はほぼ暴力的重犯罪をおかした者について「責任能力がないほど頭がいかれていた」という責任逃れに使われるが、いまの私は心神耗弱が5倍希釈されたような状態で、認めたくはないのだが軽度の老人性ウツなのだろう。いや、体調が悪いせいもある。

 今朝のニュースで大谷翔平の通訳を務める水原さんが違法のスポーツ賭博による違反で球団から解雇されたことを知った。身を持ち崩すきっかけというのはたいていが酒、ギャンブル、異性(女と書きたいのだが性差別だ)だから意外性はないはずだが、テレビ画面に映る水原さんはいつも陽性に見えるし、過剰な大谷報道のせいで我らがキシダ総理より露出時間が長いためにある種の親しみがある(好き嫌いは別にして)。ご自身の人間的な才能も高いし、引け目を感じない所得もあるのに、ギャンブルに嵌まっていわんや横領までしてしまうのか。私とは違う意味で心神耗弱だな。
 で、さっきマイミクさんのツイッターをアクセスしたら、大王製紙の御曹司で100億円近い大金をラスベガス他のギャンブル場で溶かしてしまった井川意高の発言をリツイートしていて、この偶然にちょっと驚く。井川の名を見たのは久しぶりだ。彼のツイッターを少し読んでみると、片っ端から人をディスっていることに加え、櫻井よしこら錚々たる右翼扇動者をフォローしていた。これに限らずきわめて人権意識が低いようで、真正の差別主義者だった。しつけが甘いお坊ちゃまというのは始末が悪い(嘲笑)。性格の歪みが滑稽ですらあるのだが、本人はこれに気づくどころか得意げで、ある意味しあわせだ。いまのような歪んだ時代、真っ当な人間のほうがしんどいのだから。
 4日前の日曜日、本の返却で図書館に行って、雑誌「文藝」2023年冬号を借りた。さらにリサイクル(廃棄)本で辺見庸さんのハードカバー『自分自身への審問』があったのでもらってきた。で、日曜の夕方から文藝賞優秀賞『おわりのそこみえ』を読み始めたら、これがとんでもないダメ女小説で、ここまで絶望的な女なんていないと思えるほどに破綻し切った25歳が主人公。昨年、書評で2,3取り上げられていて、ダメ人間小説愛読者としては読んでおかなきゃ、と思っていたのだが、単行本が図書館に入って来なかったので「文藝」を借りた。
 日曜月曜で読了。先の展開が読めないことと、悪ふざけだとも言える書き手の悪意が痛快なこと、彼女のみならず資本主義とそのエピゴーネン(大多数の日本人)の滑稽さが文脈から滲み出ていることなどで、わたし的にはポイントが高かった。近年の文藝賞受賞作なら、李龍徳の『死にたくなったら電話して』が出色のダメ人間小説だが、李は全体構成が巧みな上、文学に取り組む姿勢が生真面目なものだから、時々は居ずまいを正すように読んだ。が、『おわりのそこみえ』にはそういうプレッシャーがなかった。だからただただ面白く読めた。
 他方で辺見さんの『審問』を平行読みしていた。1見開きに1つか2つ、読めない字か、意味を調べたくなるフレーズがあって、辞書を使うかどうか躊躇した。辞書をひいて完全読解を目指すより最後まで読み通すほうがいい、と判断して、ほぼ一気読みすることにしたのだけど。
 たった2ページの間で知らなかった熟語2つ。
 想到、偏頗。
 自分がいかに無教養なのか、気になった熟語を全部書きだしてみるのが面白いかも。
 辺見さんはある日突然、脳出血を起こして緊急手術を受ける。その後全身不随状態を克服するべくリハビリに励んでいたところ、今度は癌が見つかって、「自分の今は因果応報なのか」「生きること死ぬこととは何なのか」という衝迫から死に身で書いた、という随筆だ。要所要所に辺見さんの読書体験のなかで心の奥に残り続ける詩のフレーズや哲学書の断片が紹介され、それをいまどう読み解き共感したのかが縷縷綴られていた。
 すごみのある本だ。先週、哲学者が書いた新書を2冊読んでどことなく食い足りなかったこともあって、辺見さんの強靱な人生論に感服してしまった。
 
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