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2024年01月24日20:16

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前を歩いていたご老人が転んだ

 昨夜23時過ぎ、Amazonのプライムビデオでアイスランド制作の映画「たちあがる女」を見始めた。環境問題の活動家である中年女性「山女」が次々と中国と関連が深いアルミニウム工場の破壊活動をする。他方で彼女はウクライナの戦争孤児を養子に迎え入れようとし、ついに許可が下りた。あとはアルミニウム工場の操業停止をやり遂げるだけだ、というなんだかワケがよくわからないストーリーだ。
 24時半過ぎ、最後まで観ていると体調を崩しそう、という不安でいったん観るのをやめた。動画で映画を観るというのはこういうことが出来るので便利だけど、古いタイプの映画通から私のような視聴は批判されそうだ。ともあれ、今夜見終えるつもり。
 本日24日水曜日。
 朝食をとり、ルーティンの掃除をし、パソコンを起ち上げてメールチェックなどをし終えたあと、図書館へ。借りた本は定められた期日までに返却しなければいけない。ローンと同じ。
 詩人全集の校閲をしていて、彼がアルピニストの槇有恒に手紙を書いている。なかで『山行』からの引用文があるのだが、文章を読んでいてどうも怪しい。写し間違いをしているのではないか? 図書館に『山行』があることは昨年の段階で知っていた。閉架図書なので、係員に頼んで出してもらい、それを借り受けた。これ以外にも4冊本を借りた。借りては返す、返しては借りるの自転車操業みたいな出し入れだ。
 帰宅後、『山行』をあたまから読み始める。詩人の引用箇所はどこにあるのだろう? 
 この一件に限らず、詩人はたとえばソローとかホイットマンといった思想家からたくさんメモをとっている。が、ことごとく写し間違いがあって、本来の全集というのは一字一句イキママとしつつ間違い箇所を「編者註」で直す、というのが正当なやり方なのだが、この原則を貫くと、編者註が異様に多くなって読者の読む気を損なう。さらには、詩人の力量的評価が下がってしまう。何しろ31文字の和歌でさえ、2首に1つは間違っている。
 編者としては実に苦しい。たとえばソローの『森の生活』から2行を写してそれを称賛しているくだりがあると、その2行を原稿用紙換算600枚の文章から見つけ出す必要がある。丸一日がかりの作業だ。デジタル化された文章ならワープロなりエディタなりで1秒もかからず検索できるのだが、昭和10年代の茶けた本でこういう便利技は通用しない。
 結局、借りた『山行』を自宅で2時間ほど斜め読みをしてようやく見つけた。不自然な文章だと思って校閲する気になったのだが、やっぱり間違いがあった。
 話が前後するが、図書館からの帰り道、自分から30メートル先を歩いていた老夫妻の男性のほうが転けた。地面と身体が衝突する鈍い音とうっという呻き声が同時に聞こえた。慌てて夫妻に向かって走った。
 もうひとり、体格のいい男性も私の慌てように気づいて駆けつけた。
 ふたりで男性に「大丈夫ですか」「救急車を呼びたい痛さですか」と尋ねた。
 男性はまったく応えようとしない。奥様はしばし茫然と立ち尽くしていた。
 2分か3分、その場で男性は転んだ姿勢のままだった。私ともうひとりの男性は、時々声を掛けながら、男性の前に立ってクルマ避けの役割を果たした。道路脇で倒れこんでいるので、クルマに轢かれる可能性がある。
 ようやく支えられて男性は立ち上がった。80代後半か。奥様も同じくらいだ。
 男性は体格がいい。細身の奥様では起き上がらせることさえ出来ない。
 老老介護。推定体重80キロのご主人と、推定40数キロの奥様。
 あと何年後か見当もつかないけれど、いずれ自分も彼と同じように転んで怪我をするだろう。頬をすりむくくらいで済むか、骨折して救急車を呼ぶかもしれない。
 家の方向が同じだったので、補助歩行器でゆっくりと歩かているご夫妻に合わせてゆっくりと付いていった。ご夫妻が道路を横断する際には、クルマを止めた。
 人生の終盤というのは、多かれ少なかれ補助介護がないと生きられない。
 私は今、老犬の介護生活をしている。目がほぼ見えない愛犬の杖となり、親友となり、親でもあって、毎日濃密な関係にある。生き甲斐とは言えないが、私のそばで穏やかな寝息をたてている愛犬を眺めていると、オレの人生は満更でもない、という嬉しい感情がこみ上げてくる。
 オレの犬は賢い。小さなジャーキーを2本、親指と中指でつまんで口の中に入れる。犬は瞬時の感覚で指を嚼むことなくジャーキー2本を舌と歯で指から引き抜く。
「指、間違って嚼んでいいよ」とオレは毎回つぶやく。
 毎晩、愛犬に馬乗りになって遊ぶ。犬、喜ぶ。
 毎晩、ブラッシングする。犬、うめき声をあげる。
 犬よりも私が楽しんでいる。遊んでもらっている。
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