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2023年02月12日19:22

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うららかな午後、「HAND & SOUL」(鎌倉)を訪ねた!!

 朝刊の折り込みチラシに「創英ゼミナール」という塾の広告があった。
<2月14日、入試本番。 笑顔あふれる高校生活が きみの新たな日常になりますように。>
 塾のチラシは毎週のように入っている。いずこも”慶應高校何人・湘南高校何人”と一流校の合格者数を競い合う下品なものばかりなので、こういう甘酸っぱい希望のコピーは爽やかだ。俺も高校受験当時は爽やかな部類にいた(笑)。

 昼イチ、昨日読んだ『身軽に暮らす』という本に登場していた鎌倉のショップを訪ねるべく、自転車に乗った。うちから2キロと近いが、途中、坂を上ったり降りたりで、息が上がりそうになった。本は今から10年も前の刊行ゆえ、内心、齢90歳近くになるご夫婦が共に生きているとは思えず、お店も閉じているだろうと思っていた。
 住所を頼りに店の前まで行くと、開いていた。照明もついているようだった。
 中に入ると、隅のテーブルでお爺さんが文庫本を読んでいた。まだ生きてる!(失礼)
 リュックに入れてた本をお爺さん(鎌田さん)に見せながら、「この本を昨日読んで、今日、訪ねてみることにしました」と自己紹介をし、厖大な数にのぼる作品を見て回る。
 見ながらいろいろとお話をうかがう。
 きれいなカタチの平べったい石に「Love & Peace」という文字が印刷されている。その石を持ち上げたら、鎌田さんが「沼津の御用邸の先に松林があって、土井晩翠を先頭に自然を残そうと運動して、松林も海岸も当時のままなんです。その海岸で拾った石でね」というように説明をしてくれる。「まだクルマに乘られ沼津まで行かれるんですか?」と問うと、「3年くらい前までは行ってました」とのこと。85歳にして鎌倉から沼津まで運転だなんてかっこいい。
 こんなふうにだらだらと話をお聞きしているうち、鎌田さんが「ぼくは無神論者なのですが、神は自然に宿っていると信じてます」と言った。私が落葉アートに関心を示していたから、自然の話をされたのだろう。で、その次に一冊の本を私に渡そうとした。
 驚いた。本はヘンリー・ソローの『森の生活』だった。それも大正時代に刊行された本だ。
「私、その本よりも前に出た明治時代の『森の生活』を持ってます!」
 今度は私の自分語りだ。鎌田・内藤夫妻は銀座の「三愛」に勤めていらっしゃったので、自分が銀座の出版社にいたこと、春になると「三愛」ビルに行って、華やかに展示されていた水着の数々を眺めたこと。そして、会社を早期退職して、ソローの生活に憧れた無名詩人の本をまとめようとしたことなどを、下手な喋りで説明した。
「もしよろしければ、いったん自宅に戻ってその本を取ってきて、お渡ししましょうか」と申し出て、自宅へ帰ることにした。
 1時間後、ショップというかスタジオというかアート作品店のそのショップを再訪。
 そこには先ほどはいなかった奥様の内藤三重子さんがいらっしゃった。
 ふたたび30分ほどご夫妻と会話を交わして、今度は本当の帰路についた。
 今日は寒さが緩んでいたし、自転車だったので、こういう芸当が可能になったのだった。
 ご夫妻の作品やお人柄を知って、存在の確かな矜恃とでも言えばいいような人間の強さにふれ伏したい思いだった。明らかに、私には欠けている要素だ。ちょっと模倣してみようか、たとえば沼津の海岸へクルマで行って、同じような石を見つけて拾い、うちにそれを持ち帰って「Love & Piece」と書いてみる。そして棚にその石を飾る。
 これくらいの真似っこなら私にも出来そうだ。
 ともあれ、思いもかけぬ週末となった。
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