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2022年10月03日23:08

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旅をする本

 ここ数日、憲法九条の会で作成したパンフレットの増刷に伴って、部分改訂をしている。各会員が好き勝手なことを主張するため、決定稿を作るのが難儀だ。パンフは2ヶ月かかって5月に出したのだが、その時も「ああでもないこうでもない」という意見が飛び交って校正は10回を超えた。A→B→B’→C→B→Aというように、最初の振り出しに戻ったりもする(苦笑)。こういう自己主張には慣れっこなので腹も立たないが、このワガママぶりってどうよ、という気がしないでもない。老いも若きも、昭和の時代に較べると我が強くなった。人間力の進歩と後退、相半ばか。これは800年前の『徒然草』で語られた世相や人間觀が、現代人にも通ずることでもよくわかるとおりで、人類はそれほど進化していないのではないか、と思う。
 
 昨日の朝刊(朝日)に「旅する本、 託された旅人たち」という記事があった。文春文庫、星野道夫さんの『旅をする木』、「木」に横棒一本入れて「本」に変え、この文庫が旅人から旅人へと渡され、世界中を旅していると。最初は愛知県の男性がスペイン南西部のカディスへ旅したときに持参。次に千葉県の女性がマレーシアとタイへ……。
 いい話だな、と思ったが、スクラップするほどでもない。
 今日の夕方、ソファーに寝そべって、1週間前にブックオフで買った角田光代さんの『さがしもの』(新潮文庫)を開いたら、冒頭の小説が新聞記事とは違った意味で、旅する本だった。
 主人公の女性が飲み代確保のため大学近くの古本屋に紙袋2つ分の本を売った。その際、古本屋の店主から「この本もあんた売っちゃうの?」と問われ、どこの書店にもあるような本なので店主の真意がわからず、売った。大学の卒業記念に彼女はネパールに旅をした。ボカラで古本屋に入ると、彼女が売った本が置かれていた。自分のいたずら書きがあるので間違いない。それでその本を買って再読した。こんな内容だったっけ? そしてカトマンズで彼女はその本を売り払った。
 アイルランドへ旅した。パブの開店まで時間があったので本屋に入った。そこでふたたび自分の売った本が売られていたのだった。また買い直した。そして再々読した。こんなに簡潔な文体の小説だったっけ? ロンドンに行ったら、またこの本を売ろう。
 というような出来すぎたストーリーだった。が、私にとっては昨日に今日のシンクロニシティだったので、面白かった。そして、新聞置き場に行って昨日の朝日記事を切り取って、文庫本に挟み込んだのだった。
 じっくりと読みたい本と出会えば、旅に出るかな。まもなく割引制度が復活するようだし、電車に乗って真っ先に文庫本を開こう。スマホなんて見ないで。
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