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2020年07月20日20:45

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野澤一創作ノートより抜粋

 昨日に続いて、昼近くから夏の陽差しが出てきた。
 布団をはじめ寝具一式を干し、冬布団から夏のそれに替える。布地のマスクを丁寧に手洗いしてから干した。太陽の光はありがたい。
 朝ごはんはペペロンチーノ、昼はチーズトースト、夜はブリのお刺身+茄子と油揚げの煮物+冷や奴。ちょっと見た目がわびしいため、冷や奴に花がつおをいっぱい乗せてみたら香りがふわっと立ち昇り、温かな気持ちとなる。慌ててラズリのドッグフードにも花がつおをトッピングした。
 ほぼ終日、文学館で写した資料を解読。旧字旧かな遣いを正確に打ち込むのは、思いの外時間がかかる。そのたび、(意味を掴もうとする)思考が中断されて難儀した。あまりにだらだらしていると牛歩の歩みになるため、中距離走のような息づかいで進めた。
 丸4日で5画像/2000画像のペースだから、いったいいつの日に読み終わるのだ(苦笑)。
   ∞∞  ∞∞  ∞∞  ∞∞  ∞∞


全身が〇ばれ、心が開かれ、あたたかい日の射しとをる好日は、あの秋の日と中に浮かび出る初子ちやんである。
 人は〇を云ふことをたわいもない事と思ふかもしれぬ。而し私はこの日のことが最も良い本を讀んだ日の思出や自然の中に住んだ数年の山湖の思出と一緒に他のものを押し流して、づつと奥深くづつと清々と遙かの天上までも私をさそうことを感ずる。そしてこれを人と生まれた思出の中の唯一のもののやうに思ふのはどうした分であらうか。
 ただこをして〇まるしいま、私はただ日がうららが(★読めず)の谷間に咲いたさんざしの花を〇の少女にむしりたい(★読めず)。
 そして思出の中に山茶花の花をさかせて、しづかにかの去りし日を喜(ことほぎ)たい。(編者註 寿ぐが正しいが、喜を当て字で使っている)
 むなしくないものがこゝにひとつあつた。
 それはこの〇〇〇の〇日の思出の中にゐる初子ちやんの目であつた。
      三十2才    (★三十の一才とも読める)
       七月三十一日

 この世に生きては静かに話すことは六かしい(★編者註 難しい)ことである。私ももう七年も都会暮しをしてゐるけれども、静かに話しをしたことは殆んどない。
 そして又、山や川を眺めたのは前後十日位に過ぎない。いくら生活してゐても都会に生活してゐては生活してゐたとは思へない。
 心に沁みる淋しさと言ふものがあるとすれば、これは都会に於ける視覺や聽覺からくるこの無嘇の有様である。都会に於ては心に到る道と云ふよりも、さいふ(ルビ点)とがま口(ルビ点)に到る道である。
 大きい山は、向ふの遠くに大きくゆれてゐるのにどうした〇のであらう。      {P1060828}
 人はこの視界に入るものを撰ぶ力はないものか。
 人は又この意識界に入れるものを選ぶ力はないものか。
 雨のやうにびしよびしよしてゐるのは、この電車にのることである。
 ソローの随筆に「野林檎」と云ふのがある。而しいま日本には「野林檎」の隨筆を書き得る人はない。
 食堂の食事のやうの随筆ばかりである。
 風を食べてゐない、火が燃えてゐない、生林檎の実を手づかみにする人はゐない。
 自然のうちに自足することは絶毫である。
★編者註(「絶毫」は寸毫という言葉を模した最上級の否定。意味としては「自然のなかで自給自足する暮らしなんてないであろう」)
 野林ゴはこの人によつて初めて噛まれる。
 山と山との間に住むことはうれしいことである。
 そをした山の日の中に浮かびくるものは、あの日、あのとき、お手鞠をついた日向ぼくりである。その時お手玉、折鶴、そして色とりどりの色紙であつた。その色紙を春の玄関に手折りて行けば、陽の眞中に浮かび出ずるもの、はづむ手鞠のやわらかさである。
 春雨の降りしきる田舎家の樚先ではづむ手鞠をきつた日はどこへ行つて了つたのだらうか。
 生きて見たい。鞠になりたい。春に近づいて行きたい。
 而るにこの文明は進歩してとどまることなし。ここにがい骨の如く疲れてゐる。
 幸福はどこにある。この文明から離れて遙か昔にかへればあると、フロイドは云ふ。
 この言葉に含む意味は、実に痛烈である。
 現代以降、人には幸(しあわせ)は少ない。
 たとへばこのラジオを聞かねばならぬということは悲しい。新聞もそうである。
 目はつかれ、心はつかれる。
 古(いにしへ)には、人間の心(こころ)があつた。いまはただ騒がしく、一日が暮れて行くばかりである。
草根木皮、�捷民�續、芋をたべて、わさびをすり、眞鯉と緋鯉を           {P1060829}
 
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