毎週火曜日は、紙ゴミの日だ。3週続けて本と雑誌をヒモで縛って捨てた。量的には段ボール箱で5個分くらいか。10年が経過した書籍はブックオフに持って行っても歓迎されず、店員の無愛想な顔を想うと捨てちゃったほうが気楽だ。
今日は加えて月1の不燃物ゴミ回収日で、物置の隅に長らくの間うっちゃっていたスピーカーとラジカセ2台を捨てた。
かれこれ3年くらい、物を少なくするシンプルライフ系の啓蒙書を読んできた。本棚の一段がその手の本でどどっと埋まってしまったくらいだから、自分はいったい何をやっているんだとツッコミを入れたくなる。溜め込まない暮らしで本を溜めてしまってどうする?
たとえば先週はじめは『スマートサイジング』(タミー・ストローベル著)を読んだ。一見豊かに見えるアメリカの中流国民がその実クレジットカードで不必要なほどの物を買って借金まみれという平均的な実態をあぶり出し、過剰資本主義の功罪を問うところから始まっている。著者夫妻は紆余曲折を経ながら、物を減らしては小さな住まいへと越して、究極の「夢」であるタイニーハウス(床面積10平米の小屋)暮らしを実現し、その快適さを説く内容だ。
狭さに挑戦、という特集は私が在籍した頃の「クロワッサン」誌での定番企画だったのだが、バブル時代だったことと時代性自体が若かったことから、いかにいい物を少数精鋭で選んで買って生活風景をスマートに見せるか、という視点だった。たくさんの物が生活空間に溢れ出さないよう、整理の技術を発揮してコンパクトに収納する、というハウツー特集もしばしば組まれた。物を買うこと自体は決して悪いことではなくて、5万円を超えるブラウスやスカートが誇らしげに誌面を飾っていた。
私自身、買物が好きだった。
20世紀が終わる頃までは。
いや、今も買物好きかもしれない。
先週、ミニコンポを買った。
既に昨年12月、ドッグフードを買いがてら湘南モールへ行き、モール内にある大型電気店ノジマで1万円台のミニコンを試聴した。ソニーとパイオニアとパナソニックとオンキヨーの4機種だった。
安価なコンポはオーディオの閉鎖空間に展示してないので、聞き比べをしてもほとんど差は分からない。テレビやパソコンコーナーと隣合っているため、大音量で聴くことも出来ない。それでも、両極端なソニーとパイオニアの違いは感じられた。
それから2カ月が過ぎて、ようやくネット注文で買った。ノジマには申し訳ないけど、2割くらい安かったから。
CDを丸々一枚聴く、ということがほぼなくなった。
この2カ月の間、少しずつ物を捨てたり整理した。CDはざっと数えて千枚くらいある。どうしようか。毎日1枚聴いたとして3年はかかる計算になる。
まだ1枚も捨てられない。
服を一着買ったら、着ない服を一着捨てなさい。
これと同じ理屈で、ミニコンポを買うため、たくさんの不要品を捨て、この際、生活もほんの少し変化をつけてみようと考えた。たとえばこんな感じ。
1 ネットで情報やニュースやブログなどを見る時間を減らす。
2 ラジオをときどき聴くようにする(テレビニュースは一日1回以内)。
3 2020年までに本やCDを含めて物を半分にする。
4 字を書いたり簡単な物を作ったりなど、手作業を面倒臭がらない。
昨日、近所のエコロジカルなショップで木材片をもらい、CDスタンドを作ってみた。木材を凹に削り出す専用工具なんて持っていないので、小刀とノコギリだけで果たして出来るかなと不安だったが、作り始めてみると杉板は軟らかいため簡単に削れた。それでも一般的なCDと紙ジャケCDの2種類の溝を彫ると3時間くらいかかった。小刀で数回削っては息を吹きかけておがくずを飛ばす、ということを庭で延々続けていると、いつのまにか無我の境地になれた。
話が前後するが、パイオニアのミニコンポは土曜日に届いた。最初に吉野大作先輩の新譜アルバムを一枚聴き通し、ラジオのチューニングを設定し、BluetoothでMacBook ProとiPhoneをそれぞれ接続してからYouTubeでギルバート・オサリバンの「落ち葉のコンチェルト」を聴いてみた。音質の劣化は想定内、というか、大音量でない限り、CDとの差は小さい。YouTube、恐るべし。音楽配信サービスのSpotifyもいい音で聴ける。
口コミではユーザーの尊大な悪口が目立っていたが、音質は悪くない。いや、この程度の値段で、かつてお気に入りだったソニーのバカ高いミニコン「キューブ」と同程度の音質だ。パイオニア製だが、お決まりのメイド・イン・チャイナ。世界の工場中国のおかげで、安価な物が手に入る。資本主義の利点であり、構造的な搾取でもある。なにしろ学生時代に買ったステレオラジカセより安いんだもんなぁ。
物を減らそう、ダウンサイジングしよう、ということで大幅に物を減らし始め、そのご褒美に物を買い込むってどうよ、という反省がないでもない。
が、この自己欺瞞に向きあって、ポジティブに尊厳を取り戻していきたい。
CDをちゃんと聴く。買って一度も聴いていなかったモーツアルト選集6枚組もこの際、封を切って聴いてみよう。昨夜はラジオでオリンピック団体ジャンプの実況を聴き終わったあと、キース・ジャレットの「ケルンコンサート」を最初から最後まで聴いて寝た。これだけでも少し生活改善が出来たようなものだ。
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