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2015年11月17日20:48

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人生の道程に潜む危険と愚直さ、その対比

 朝9時、ラズリの散歩から帰る途中で目の前に一瞬、白い物が見えた。えっ、今のは何? と顔を上下に振ると、地面に白い粘液状の物がある。頭上を見上げたら電線に止まっているカラスがいた。目の錯覚ではなかった。これはカラスの糞だ。頭の上に落ちるかどうか、すんでのところだったようで、運が良かった。
 人生っていつもこんな道を歩いているようなものだ。10年以上前のテレビCMだが、細い塀の上を男性が危なっかしくしかも落ちずに歩いている保険会社のコマーシャルがあったのを思い出す。たぶんこれまで自分はただ運に恵まれていただけだと、あらためて思う。この幸運に応えるべく何か恩返ししないとな、なんて殊勝な気持ちにもなる。
 で、今日から何十年も前の本を慎重に開いて読み始めた。本当は珈琲をそばに置いてちびりちびりとやりながら読みたいのだが、そうもいくまい。
 正午を30分くらい過ぎたところで、昼メシをどうしようかと思い始める。妻が外出しているときは、外食か(といっても9割がラーメンだが)、あり合わせの物で済ませるか、スーパーの総菜コーナーでお弁当を買って帰るかのいずれかだ。今日は何を食べたい?
 スーパーに行って味の濃い冷凍チャーハンを買おう。
 自転車でスーパーへ行き、冷凍食品コーナーでさんざん迷った末に味の素の「焦がしにんにくのマー油と葱油が香るザ☆チャーハン」という異常に長い商品名のそれを選んだ。焦がしにんにくマー油とか葱油って、豚骨スープ系ラーメン屋の「珍味」だ。
 家に戻って、わざわざニンニク1片とネギを冷蔵庫から取り出してみじん切りにし、フライパンでゆっくりと炒めた。その上に冷凍の「焦がしにんにくのマー油と葱油が香るザ☆チャーハン」を袋からぱぱっとフライパンに出して炒めたのだが、屋上屋を重ねる行為とのはまさにこのことだ。自分でも変だな、と思ったのだが、にんにくが強く効いた味が欲しかった。
 食べてみたら当たり前のことながら焦がしにんにくの味が全体に行き渡っていて、思ったとおりの味だったのだが、これは冷凍チャーハンが美味しいのか私がひと手間を加えたことが美味しさに繋がったのか、判然としない。そもそもチャーハンなんてどんな味付けでも自分で作ることができるのに、わざわざちょっと高い冷凍チャーハンを買うこともない、と食べ終わってから反省した。愚か者め。
 午後2時ちょっと前、フリーライターからネット古本屋に転業した男に電話をした。彼と話すのは10数年ぶりだ。知り合って以降、毎年お互いに年賀状のやりとりをしていたので、不自然でもない。
 明治から昭和初期の古本事情や現在の売値を聞きたかったのだ。が、そんなことはネットでもある程度情報を得られる。昨夜、そう言えば久しぶりにあいつの声を聞いてみたいものだ、と思って電話をしただけなので、そのことも彼に告げる。古本の値段なんて口実みたいなもので、思い出したので電話しただけだ、と。10分くらい会話を交わして受話器を置いた。
 朝は晴天だったのに雨が降りそうな気配だ。夕方の散歩を少し繰り上げ、ラズリと一緒に家を出た。駅の近くまで行ったところで小粒の雨が落ちてくる。カラスの糞じゃないだけましだ、
 駆け足で家に戻ったところで雨の音が聞こえるくらいの降りになった。まだまだ運は残ってる。
 相変わらず夕刊が面白い。今日は文芸の曜日で、私小説紡いだ孤高の作家・川崎長太郎の「物置小屋」再現、という長太郎没後30年回顧録の紹介記事があった。波状のトタンで出来た粗末な物置にビール箱(文机)、という写真が掲載されている。小田原文学館だと行けないこともないので、見に行こうかな。そもそも貧乏作家の私小説が好きだし、狭い小屋暮らしに大いなる憧れがあるので、私の趣味趣向にぴったりの展覧会だ。
 有名人男性のスイーツ紹介というのも今日の火曜日は定例である。劇団「ナイロン100℃」所属の大倉孝二という人が東ハトキャラメルコーンを挙げていた。だいたいは有名どころの和菓子屋や洋菓子店のこじゃれたスイーツを挙げるのだが、キャラメルコーンとはね。本文を読むと、<なぜ今も好きかというと、新しいもの好きではない自分の性格と関係があるのかもしれません。芸談での芝居も「くだらないことをやる」というルールで20年以上続けてきましたが、始めた頃と今と、やりたいことは変わらない>とあって、激しく共感、ひどく感動。
 くだらないことをやり続ける、というのがその人らしい人生だ。
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