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2015年02月22日22:50

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男湯と女湯を間違えた

 治まったかと思うと我慢が出来ないほどの激痛が走る歯と歯茎。原因はいくつか考えられ、治療法も見つかるかもしれないのだが、痛む部位が次々と変わったり痛みの度合いも不定で、そもそも医者を訪ねて事情を1分で説明することが出来ない。こういう時、それでもネットや知人からなにがしかの情報を収集し、正確な医者選びをするのが一般的な人間だろうが、どうも積極的に動かない(動けない)自分がいる。
 温泉に行こう。
 20年ほど前に突発性難聴になって耳鼻咽喉科に通った。が、改善すら出来ず1か月近く耳の奥から聞こえる機械音とつきあった末、3泊の湯治に行って3日目にいきなり治ったことがある。10数年前にも同じ症状で同じ温泉へ行き、治った。今回は歯痛だが、温泉療法で改善されるのではないか?
 突発性難聴の時は四万温泉積善館で湯治をしたが、今の時期、積雪があるためノーマルタイヤ装着のクルマでは行きかねる。なので、昔から湯治客で賑わいがあった「信玄の隠し湯」とされる某温泉郷の某高級宿に投宿することにした。宿泊予定の3日前、観光協会に電話で積雪情報と予想を訊いたら、雪の心配はまずないという。万が一雪が降ったら、その場でクルマを置いて電車に乗り替えたらいいだろう。 
 宿に着いて10分後、大浴場の源泉槽にいた。ぬる湯なのでいくらでも浸かっていられる。微かに硫黄臭が混じる湯気も思いの外気持ちいい。
 部屋に戻って体が少し冷えたら、また温泉へ。露天風呂で半身浴をしていたら、半日でもいられそうだ。が、夕食の時間だ。
 こんなふうにその日も翌日も湯治に専念。歯痛が一度襲ってきたが、鎮痛剤を服用して15分後に痛みは退いた。鎮痛剤を飲んだのはたった1回だけで、ひょっとしたら治ってきたのかもしれない。
 朝の大浴場で、生まれて初めての経験を得た。
 朝ご飯を食べて大浴場に入った。美味しい朝食をいただいたあとに、極上の湯が張られた朝風呂。たいそう贅沢だ。
 大浴場の源泉槽に浸かって見るともなしに天井を仰いでいると、扉がゆっくりと開けられひとが入る気配があった。露天風呂に2人ほど年輩の男性がいたが、大浴場には私一人なので貸し切り風呂状態だ。
 前を見たら、そこに女の人がいた。申し訳程度のタオルで体の前を隱しているが、紛れもなく女性の裸がすぐ目の前にあった。
「あっ!」と抑制の利いた悲鳴がした。私は女体ではなく彼女の顔を見て、同じく「えっ?」と驚いた。自分が女風呂に入っているのではないことは、10分前の併設露天風呂で爺さんがいたので確認できる。間違えたのは女性のほうだ。
「きゃっ」とふたたび彼女は恐怖と羞恥が混じった小さな叫び声をあげた。目と目があったので「昨日と今日は男性女性が入れ替わってるようですよ」と言うと、「わたしが間違えました。ごめんなさい」と彼女は答えた。
 人間は哀しいかな、こういう刹那につい地が出てしまうものだ。私は彼女の顔を見て裸体を見ないよう努めていた。というのは半ば本当で、事実は半分違う。女性は、顔だけを見て欲情しそうなほどの美形で、貴婦人然としたオーラがあった。10年後の石原さとみが彼女の顔に見え隠れする。
 誤ったことを悟った彼女は脱衣場に向かった。タオルで前を隱しているだけなのでお尻まで丸見えだったが、すぐに目を伏せた。彼女が振り返るとも思えないが、恥じ入っている女性を見ないのがルールだ。
 この一件で歯痛が治ることを祈りたい。
 往復330キロのドライブ。運転好きなら大した距離でもないが、ロングドライブがしんどくなってきた私にはちょうどいい運動にもなった。

 今日は日曜日。夜9時から連続ドラマ『流星ワゴン』を観る。今日が第6回目だ。
 これほど視聴者をいい意味で不愉快にさせるドラマも珍しいのではないか? 生きていく上で誰もが経験する蹉跌や齟齬、理不尽や哀しみに対して真正面から向きあうSF仕立てのドラマで、重松清の原作本を読んだ者ではない限りここまで予定調和な展開がまったくない。私は基本的に日本の歴史を美化する講談風な時代劇だとか、いきなり財産目当ての殺人事件から始まって1時間半後には論理破綻のなさだけが取り柄みたいな解決劇だとか、トレンディさを120パーセントくらいパワー・アップさせて観る者に一服の清涼剤となるようなウソっぽさが苦手だ。どうせウソ(フィクション)ならば、あり得ないほどに真摯だったり滑稽だったりするドラマが観たい。視聴率の低さが雑誌ネタになるほど不人気らしいが、それはそうだろう。「快・不快」で9割方が不快な時間だ。人間の弱さを大袈裟なほどにあげつらい、涙と鼻水を垂らしながら抵抗しようと一所懸命になっても、実らないようなドラマを見続けるのは辛抱強さが要る。最終回まで、あと何回観ないといけないのだろう?
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