ふたりしてよけたわさびの塊が水槽の底の石のようだよ #短歌
すべての辛さが許されるような気がして電車の窓に額をあてる #短歌
しゃべりすぎた舌を歯磨きして眠る だまされないまま朝になるまで #短歌
その雨の冷たさを静かに受け止めてあなたのシャツをそっと乾かす #短歌
どこまでも続く野原のまんなかでふたりだけの器をみつめる #短歌
すべてが嘘になってしまえばいいのにと病院の窓を見つめてる夜 #短歌
奇跡なんて起きないと知るためのような蛍光灯のまばゆさ #短歌
不揃いな角砂糖をふたつ落としたような生活のはじまりの歌 #短歌
つじつまの合わない世界で僕たちはフォークの先をただ見つめてる #短歌
レシートを丸めて捨てる今日という一日もまあまあ合ってたらしい #短歌
さわさわと音を立てれば崩れてく あなたの好きな午後のしずけさ #短歌
こころつて乾いた谷のどこにある バス停だけがまだ立っている #短歌
バス停の骨組みだけの停留所 さよならだけがまだあたたかい #短歌
隠しきれない優しさのように浮かんでるクルトンをそっとスプーンですくう #短歌
とあいうえお君へと続く雨ならば傘を忘れて迎えに行こう #短歌
「あ」から「ん」までぜんぶ雨なら窓を開け君の知らない文字も降らせる #短歌
影になる君の輪郭なぞるようにローズマリーを指で曲げてる #短歌
影絵へと変ってゆく君見送って指に残った香りを抱いた #短歌
傷ついたその手でそっと触れたときあたたかかったあの日の背中 #短歌
ゾンビより生きている気がしなくてさ 街の中心でまばたきをする #短歌
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