書くことは泡を数える事に似る 消えてしまってようやく残る #短歌
飲みかけのサイダー越しに見た街は誰かの一人称みたいに溢れる #短歌
湯気のなかスプーンひとつ眠ってる 答えはいつも少しぬるくて #短歌
待つことをやめればいいと言う人は待つしかない夜知らないんだね #短歌
目覚めても枕のそばにあいうえお いちばん渋い「ご」がまだ光る #短歌
靴下を裏返したまま干すように昨日のごめん 風へ預ける 短歌
海の底まだ靴紐は結ばれたまま 銀の小魚だけ空を知る #短歌
叱られて残した林檎 その赤は命が今日を拒んだ証拠 #短歌
あじさいの青をひとひら胸に置き ふたりの影は水脈になった #短歌
目覚めても家族の靴が並ぶ朝 やさしい音でお湯が沸いてる #短歌
演じ終えシンクの底に横たわる銀のフォークにそそぐ水道水 #短歌
時刻表信じるよりも簡単にあなたの「すぐ」が基準になった #短歌
窓ぎわに透けるラムネの青がいて物語から先に夕暮れ 短歌
濡れた窓 だれの輪郭でもなくて息をするたび夜だけ育つ #短歌
生き延びる理由をひとつ探しては雨粒だけが正解になる #短歌
コンビニの軒を借りれば雨のおと だれも泣かない夜になっていた #短歌
冷蔵庫開けた理由を忘れてる 痛みもきっとそんな入口 #短歌
「夢だよ」と言える誰かがいる朝は世界のほうが少し敗けてる #短歌
ほんとうは傷ではなくて世界との接続だけが少し痛かった #短歌
しおりには昨日のままの約束が月のあかりで息をしている #短歌
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