ただぼーっとしていただけの午後なのに麦茶の氷が夏を連れてく#短歌
人生を畳む練習ではなくて空気を抜けば音だけがする #短歌
きれいごとみたいな四角できあがり机の上に午後が座った #短歌
考えてばかりいたから遅れたよ 森はとっくに朝でしたよね #短歌
風になる比喩を疑いながらなお身体は速度だけを信じる #短歌
停留所ひとつ飛ばして夕焼けを拾いにゆけば夏はやさしい #短歌
僕という乗り物だけが降車せず終点までも透明だった #短歌
信号が青くほどけるそのたびに昨日の靴が軽くなってく #短歌
風になどなれないことは知っている それでも窓を少しだけ開ける #短歌
白い結晶ひらひらと足りないぶんを舐めれば海だ #短歌
アンパンマンを好きな子供のいる世界 だから悪役は逮捕できない #短歌
終点がはじめの駅になるようにあなたの声に帰ってゆける #短歌
湿る石ひとつ無でれば明日までの静かな地図が手のひらにある #短歌
循環は出口を持たぬ思想です 降車ボタンだけ赤く点いた #短歌
何度でも同じ景色を曲がるたび 僕だけ少し別人になる #短歌
洞窟の奥でひらいた掌に小さな朝が眠っていました #短歌
どこへでも行けるわけではないけれど同じところへ戻れる安心 #短歌
冷蔵庫ひらけば夜がひかってる 匙の先からほどける記憶 #短歌
白色は欠落を隠す色だから舌だけ真実を知ってしまった #短歌
本当は甘さじゃ埋まらないことをバニラだけはまだ信じていたね #短歌
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