戻れない場所ばかりが憎くなり僕らはここで灰皿を探す #短歌
傘なんて買いたくないし君になら濡れたままでも会いに行けるよ #短歌
名もない花の匂いに満たされて僕らは二度と言葉を持たない #短歌
濡れたシャツ皮膚にくっつく生々しさ あなたのなかへ這い上がる雨 #短歌
透明なビニール傘をひらくたび誰かの今日を借りてる気持ち #短歌
「危ないから」と片付けられてゆくものに恋の記憶も混ざっていたり #短歌
撤去されたあとの更地をスマートフォンで撮る これでもう忘れていいよ #短歌
おるすばんしているあいだにあの青はだれの涙になったのかしら #短歌
揺れていないと見えなくなる仕組みたったと役所のひとが言っていたっけ #短歌
そのベンチの冷たい湿りを分け合ってあなたの肩をそっと温める #短歌
定位置をなくした犬が通りすぎしばらくそこはただの明るさ 短歌
深夜二時コンビニの灯に照らされて僕らは別に燃えなくてもいい #短歌
しろくてまるいものがころがってもうだれのものでもなくなっちゃった #短歌
新しく貼られたタイルの目地だけが白くてそこに西日が刺さる #短歌
いちご大福の粉が残る手でひらりとそれをめくってみたい #短歌
ビニール傘のなかに広がるふたりきり少し濡れてる肩がうれしい #短歌
「美味しい」とあとから言えばすべて良しフォークの上の小さな恋は #短歌
またひとつぼくの知らない銀の注射針が世界を深く突き刺していく #短歌
濡れてた髪 耳のうしろにつけるときひみつの鍵がひらく音がした #短歌
エキストラのような僕らの日常をナイフが静かに切り分けてゆく#短歌
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