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2026年03月23日20:52

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3/21 焼絵 茶色の珍事@板橋区立美術館

一昨年千葉市美術館の滴水軒コレクション展で見た「不思議な絵」がずっと気になっていた。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988142148&owner_id=2083345&from=list_diary_search

北鼎如蓮《水辺に立つ芸妓図》
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紛れもなく江戸時代の浮世肉筆美人画ではあるが、水墨や紅嫌いならともかくセピア色一色は珍しい。その上ぼやっと朧げな筆致が、芸妓の儚い運命と重なり、妙に情感があり、印象深い作品だ。この時「焼き絵」というものを初めて知った。金属製のコテを熱して焦がしながら紙や絹に描いたものだという。

もう少し知りたいな、と思っていたところに、ニッチな企画で有名な板橋区立美術館で、焼き絵尽くしの展覧会があると知る。心躍る思いで、開幕を待っていた。



ところで、板橋区立美術館へは、高島平駅からバスが出ていて、それが一番歩かないで済む。ただし1時間に2本しかないので、それに合わせて行動していた。それが、4月の改訂で、1時間に1本または0本に減便されるという。このご時世仕方がないのだが、好きな美術館がまた遠のく。涙

展覧会を通して得た知識を総合すると以下の通り。

日本での焼き絵の歴史は、平安末から鎌倉初に遡ることができるという。当時は料紙の装飾として用いられたという。
ちょうど展示にあったこちらの作品がそれに近いのかもしれない。
作者未詳、上田秋成筆《源氏物語五十四首短冊貼交屏風(右隻)》
屏風の金砂子は、実は金ではなく鉄筆による焼きの点描だ。短冊には薄茶色で草虫が散らしてあるが、これも焼鏝で描いた絵である。金の屏風や短冊のようでいて、いぶし色が渋くて落ち着いた趣である。
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焼き絵の特徴は、鏝(コテ)を紙や絹に押し付けるので、独特の艶が出る。焼け焦げの度合いで濃淡が出せ、全体に落ち着いた渋いセピア色、枯淡の味わいがある。

鉄筆、鏝の跡には凹みができ、鋭い線も出せれば、そっと炙った柔らかい面も表現できる。
とはいえ、支持体は紙か絵絹、穴があかぬように熟練の技が必要であろう。
経年劣化も激しく、褪色はもとより、焦げ落ちもあるが、それも味わいと見ればまた良し。


こんな特徴に目をつけ、再評価したのが江戸時代の知識人、主に俳諧師や狂歌師であった。
中国では「火画」、朝鮮では「烙画」として存在し、太田南畝と中国人が焼絵について語り合ったり、朝鮮通信使に日本の焼絵が披露されるなどしたという。

当時の浮世絵版画は多色刷りが可能となって以来色鮮やかな絵が庶民にも手に入るようになった。その反動か、江戸っ子通好みの「紅嫌い」「藍摺絵」など渋い絵も流行る、もともと日本には水墨画の歴史があるので、モノトーンは受け入れやすい。
さらに、江戸時代は「四十八茶百鼠」といって奢侈禁令の下茶色のバリエーションも豊富で、特に人気の歌舞伎役者の茶は人気があったという。
また、病気平癒・疱瘡除けの赤絵とも通じ、火を扱って描くということから江戸の華・火事除けの願いも込められたのではないか。



焼き絵を通して、時代背景も江戸絵画の傾向も見えてきて面白いね。


展示では、現代の焼き絵、ウッドバーニング(電気鏝)の作品もあって、そこもまた面白かった。



撮影は不可。2時から公演があったため人が入っていたが、相変わらず少ない。バスが廃止になるのも頷ける。

出品の多くが「彌記繪菴(やきえあん)」所蔵だったけれど、検索しても情報はなし。

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001926/4002014.html
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「焼絵」とは、熱した鉄筆(てっぴつ)や鏝(こて)などを紙や絹などに押し当て、絵や文字を表現した作品です。燃えやすい素材に火で絵が描けるとは信じがたいかもしれません。しかし、本展でご紹介する作品は、水墨画さながらに線描から点描、濃淡といった表現が巧みになされています。文献上では平安末〜鎌倉時代頃に「焼絵」の記述が確認できますが、現存作例は江戸時代以降になります。焼絵が当時も稀な技法だったことは、江戸後期の歌文集に 「いといと珍らかにこそ(非常に珍しいことである)」 〔村田春海『琴後集』「焼絵記」〕の一文があることからも、うかがい知ることができます。
茶色を基調とした焼絵は、ぱっと見は華やかと言い難いものです。しかし、味わうほどに滋味深く、心焦がれるような魅力を秘めています。この春、板橋区立美術館で展開する茶色の珍事を、ぜひ目撃してください。


第1章 日本の焼き絵

稲垣如蘭《芦蟹・芦鷺図》
稲垣如蘭(いながきじょらん)は、近江・山上藩の第5代藩主で、独学で焼き絵の技術を習得。まるで水墨画のような完成度の高さ
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鷺はもともと薄いため褪色しているが、それも味わい。鏝跡の凹が見える。
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稲垣如蘭《三十六鱗図(登竜門図)》
三十六鱗とは鯉の異称。きっちり並んで細かく描かれた鱗が見事。南蘋派的構図。
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稲垣如蘭《松茸図》

焦がした部分が経年のため剥がれ落ち、いい味わいになっている。余白を多く取った《椿図》もあったが、こうした滋味深い作品は、茶席にも使われたともこと。
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如秀、洞山人賛《亀図》
甲羅の重量感。如秀は如蘭本人かも。
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蘭旭《梅鶴図》
蘭旭は如蘭と関わりがあったとされる。
白い絵具を使わず、周囲を淡く焦がして紙の白さを際立たせて鶴の羽を表現している。画像でわかりづらいのが残念だが、その繊細さに驚愕。
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晴山《虎図》
画風は南蘋派。淡く焦がしてふんわりモフモフ
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白峨《竹虎図》
白峨(恋川白峨)は浮世絵師出身。
こちらは炙りの強弱で全体の立体感を出した上に濃い茶で縞模様。まるで筆の掠れのような竹の描き方も見事。
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白峨《露草狗子図》
当節流行の応挙や蘆雪の子犬に倣ったのか、朝鮮「狗子図」を手本としたのか、あまり可愛いとはいえないが、3匹目お尻だけを出している白犬は輪郭線なく周りを炙って表現。
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白峨《達磨図》
筆の掠れを焼き絵で表現。賛も焼き絵、落款は合わせて茶色の朱肉で。
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北鼎如連《文読遊女図》
北鼎如連(ほくていじょれん)は北斎の弟子、浮世絵師である。焼き絵でも肉筆画同様、狂おしい色香の遊女、精緻な着物の文様に舌を巻く。
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第2章 朝鮮の烙画
始まりは16世紀後半とも言われるが、現存するものは19世紀以降。日本では山水画の焼き絵はあまりないが、朝鮮では山水画、花鳥画が発展。中国の唐、明代の漢詩を嗜む人のあいだで流行した。烙画の証として、敗れた芭蕉の葉に「火画」と書いた印章が用いられた。
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朴秉洙・パクビョンス《山水図》
水墨画とまた違った、枯淡な味わいがいい。
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細かいところまで!
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朴秉洙・パクビョンス《葡萄図》
焦がして描いたとは思えぬ葡萄の瑞々しさ
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朴桂淡・パクゲダム《花鳥図屏風》
まくりで発見されたという。
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石南・ソクナム《竹図》
青く染めた絹地に焼絵。独特の光沢がある
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タンソという縦笛は、竹製で烙画で装飾があり、柳宗悦が収集したという。


第3章 中国の火画
宋〜明代、あるいはもっと古くからあったと言われるが、不明な点が多い。

沈達《西王母図》
竹の芯を入れた線香で描「香画」線が細く鋭い。
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実は、かつての焼き絵(日本)、烙画(朝鮮)、火画(中国)の作品を見る前に序章「知っている焼き絵のまだ知らない姿」が紹介されていた。


そこで見たのは、懐かしい羽子板。私と同年代なら必ず遊んだ経験があるもの。そうか、これも焼き絵だったのだ。観賞用の押絵羽子板に対して、実用的で彩色が剥がれても焼き絵は残ると親しまれた。
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その他、贈答用のカステラの桐箱など身近に焼き絵は使われていたのね。



最後に現代作家。
絵本作家の猫野ぺすかさんの作品。
電動鏝を使ったウッドバーニングに彩色。猫などの動物の毛並みの柔らかさや絵本の温かみを出すにはこの技法はうってつけ。


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もう一人は、彫刻家の辻野榮一氏。焼鏝を丹念に当て繰り返すマチエールで、キノコや架空の軟体動物を生み出す。
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板橋区立美術館らしい展覧会、面白かった。
4月12日まで



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