卓上の灯り消さずに椅子を引く 書きかけの頁 閉じぬまま置く #短歌
嘘だからやさしく触れる爪の先 割れた月さえこちらを向いた #短歌
迷わずに差し出す骨の透ける先 白紙のなかに火種を置いた #短歌
白線を喉まで引いて立ち止まる 沈黙だけが旅券を持って #短歌
神の余白しずくみたいにしみる午後 ひらがなだけがゆらり漂う #短歌
触れたあと名を失くしたる白の底 赦しのように影がひろがる #短歌
あいあいとふくらむ午後の風船よ一回きりの空へ放とう #短歌
川沿いにほどける白い息の帯 まちがいさがしまだ終わらない #短歌
靴音が来るはずもなく滲む床 待つことだけが正解になる #短歌
ぎりぎりのところで笑う午後が好き 限界線を越えて手を振る #短歌
ほどけても消えはしないと言いきってひかりの縁を跳ねる足音 #短歌
からっぽの胸にひびくは靴の音 軽さはいつも少し寂しい #短歌
言い返すかたちの中で息を吸う わたしでない熱わたしに触れる #短歌
口を閉じ時間の縁を踏み外す 過去にされゆくわたしの体温 #短歌
並べても同じにならぬ体温よ 代替という言葉を拒む #短歌
ひとくちで世界は少し裏返る メロンの午後に白い雲のせ #短歌
知らないと言ってしまえば軽くなる ぜんぶ世界のせいにして寝る #短歌
撫でられたふちの冷たさ抱えつつしまいきれない夜をひらいて #短歌
ポケットの布の暗がりあたたかく 言葉に触れる前で止めたい #短歌
カーテンを閉めた部屋には夕焼けのこぼれたとこだけ残しておくね #短歌
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