夜の芯すこし減らして書くたびに未来の音が指へにじんだ #短歌
汚すとは触れてしまうと言うことか白き静けさ指にほどける #短歌
残り香をたどる心の行く先に名を持たぬまま春ぞひらける #短歌
芥川の名を呼びつつ返す声 正しき位置を探しあぐねて #短歌
鍵をまだかけなきままで待っている夜の重さを手放さないで #短歌
剥がれずに待つ果実ほど艶を持ち触れない罪が甘くする夜 #短歌
委ねればほどけてゆける輪郭を季節のひかり静かに拾う #短歌
まぶしさについていけない足のまま 天井の揺れひとり見ている #短歌
反論のかたちをなぞる指先にわたしでない熱ひそかに宿る #短歌
跡のある紙を閉じれば静けさがわたしを先に過去にしてゆく #短歌
擦り減りし頁の縁に触れながら春の傾きそっと受け取る #短歌
触れたあと戻れないままいる舌に夜のひかりが遅れて宿る #短歌
やさしさをしまい忘れた指先が箱のふちだけそっと撫でてる #短歌
ポケットでまだ鳴らないでいてほしい 名前になる前 鼓動のままで #短歌
空席のかたちを撫でて立つまでの時間を少し連れて帰ろう #短歌
体温の余白を干せば風になる ここにいたことまだ乾かない #短歌
朝の端 砂利を鳴らしているひとの不在を置いて光が満ちる #短歌
起き上がる腕によりをかける残った空白を誰でもないと呼ぶまでの距離 #短歌
折り畳む経済力をほどく夜 愛は展開図肌で確かめ #短歌
指先に残るくぼみを確かめて祈りの外へ出られずにいる #短歌
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