急ぐ手が季節を追い越す音がする 冬はいつでも未処理のまま #短歌
背負われた春の行き先知らぬまま花は花とて地面に眠る #短歌
読まれないってやさしいね ときどきね言葉が浮いて自由だからさ #短歌
知ってても言わないでいる時間ってさ たぶん人間の発明だよね #短歌
ひも結び直す時間も道になる 急がない足で帰る途中 #短歌
目を伏せてまばたきひとつしてるから現実の角にそっと触れちゃう #短歌
指先で擦れば消える冬だけどマッチの記憶が蕾に残る #短歌
靴音ってだいたい愚痴だよ ね 知ってた?人に言えないサイズのやつで #短歌
触れるより名づけるほうがむずかしいやさしさって生物だよね #短歌
「我々も」って言うだけで少しだけ後ろへ下がる声になるんだ #短歌
行き先を聞かずに見送る癖になる 戻らないもの抱えないため #短歌
コップにはまだ雨の音のこっててなにも言わずに朝を待ってる #短歌
ポケットにうなずき入れて持ち帰る 街のあかりがちょっと重い日 #短歌
なまえ脱ぐ音がしずかに床になる ひとりの形 湯気みたいだね #短歌
名をしまうポケットだけが深くなる 勝たなくていい地面がひかる #短歌
目が覚めて夢のつづきの外にいて布団がそっと朝を断る #短歌
言えなかった名前のかわりに息を置く 自分でいるのがすこし楽です #短歌
先延ばしのままでもちゃんと朝は来てわたしを責めず窓がひらくよ #短歌
そばにいて何もしないでいい時間それが約束みたいな顔で #短歌
帰るって言わせた沈黙 つま先で時間が先に靴を履いてる #短歌
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