指の上まだ名を持たぬ願いごと 石は順番を覚えていない #短歌
歩きつつ捨てきれぬもの数えおり生きろの余韻が靴底に付く #短歌
詠むほどに指が濡れてく詩集あり 背表紙だけが遠くを向けり #短歌
ドリンクの氷が溶けるあいだだけ雨の文字たち息をしていた #短歌
うなずいて鏡を閉じる朝の駅 東京はまだ名札を外す #短歌
声かけて返事のかわりに揺れが来る くらげの祖母は水の途中だ #短歌
減速のたび思い出す暗さあり 胎内みたいな道を抜けてく #短歌
指先に甘い油と静けさと手紙はそっと出口知ってる #短歌
振り向かぬ背中に夕餉まだ熱く かさぶたの味 風に混じった #短歌
一歩目のためらいだけが残されて遠浅の色 身体を持てり #短歌
ほどけない拳の熱を地に預け蕾は順に光を受ける #短歌
火を止めてまだ残る湯気聞いている 母の鼻歌空気を噛めば #短歌
呼べばいる気配のほうが先に来て白い揺れだけ答えになる日 #短歌
薄むらさ期夜をほどくと決めた手に雨はやさしく形をくれる #短歌
足もとに体温の差を置いてみる 犬の違いが人を分けたり #短歌
造花にも季節があって夜が来る 人間でいる椅子を引き寄せ #短歌
ベランダの洗濯物が星になり団地の奥でケーキを思う #短歌
名で呼べば人は擦り切れ残るのは黙って立ってたかかとの時間 #短歌
昼の夢ひらく音して花の冠 笑顔の奥へ落ちていく午後 #短歌
ふとんへと記憶をたたみ夜になる 夢の前室で今日を乾かす #短歌
★
ログインしてコメントを確認・投稿する