マ行だけやわらかくして夜更けゆく妻の影にも声が宿りて #短歌
轍からしみ出す時間を拾いつつ君の視線はまだ巻き戻る #短歌
休みとは息をそろえて並ぶことエレンの影も午後にひらひら #短歌
背中ごし鉄は歌ってまだ生きる 銃弾よりも花がうるさい #短歌
普通さえ更新されてゆく街でひとりの数が呼吸をはじめ #短歌
月を見て一握りだけ変わるなら悲しい魔法も仕様です たぶん #短歌
複写音 人の一生挟み込み 誰でもなくて誰かになる紙 #短歌
抱かれたる人魚の腕のぬくもりでこぼれた粒を誰も拾わず #短歌
願書書くペンの音だけやけに澄み ミルクは白く 人生は黒 #短歌
沈む街遊具だいたい助け舟 掴めば軋む未来の音が #短歌
息ひそめマスクの奥で数かぞえ駅が森だと誰にも言えず #短歌
それだけで済ませた顔の余白から釣銭みたいにごめんが落ちる #短歌
ガラス越し植物ばかりが育ってる舌は前後を越境したまま #短歌
乾燥機止まる瞬間見届けて人生はまだ畳まなくていい #短歌
ゆっくりとしてていいんだ その声が世界の速度ずらしてくれる #短歌
火傷して確かめるほど冷めていく忘却はいつも作業に似てる #短歌
投函する前の1秒長すぎて風が私を住民にした #短歌
確かめる目と手のあいだ揺れながら似た体温を探す売り場で #短歌
やさしさは行き場をなくし反射する自分に触れて少し腫れてる #短歌
裏山の土はあたたかすぎていて未来を埋めた手も眠くなる #短歌
赦されたごっこの残り ともだち未満生き直すきみ #短歌
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