遠くから爆ぜたひかりが木蓮の冬芽ひとつにやわらかく降る #短歌
出禁にし静かな部屋の気圧まであなたの名だけまだ騒いでる #短歌
革ジャンの硬さほぐせば冬空の端っこだけがあたたかくなる #短歌
噴水の上がる気配に胸すこしざわめくまではだれでも薔薇だ #短歌
そんなのってアリなの 今日の夕暮れにひっそり嘘が身幅ひろげる #短歌
つづく夢 雨にうすれてなお咲いて花の姿で季節を返す #短歌
やるたびに変わる結果を笑いあい予測不可能それでも続ける #短歌
ベタなやつやりたいなんて言いながら手順通りで熱くなる胸 #短歌
麻婆豆腐は飲み物ですと言い切れぬ舌の迷いも赤く溶け出す #短歌
うまくやってるふりのままでも手はあたたかく買ったばかりの蜜柑を分ける #短歌
マダガスカルジャスミンの実をそっと摘む軽さがすべて過去を鳴らした #短歌
手売りして指紋ついたままの盤がインディーズらしさを返してくる夜 #短歌
試食ないの?と聞いたあなたの声だけが棚のすきまに甘くひびいた #短歌
失業の日々にもまだね飽きてなくスープを飲む明日が揺れる #短歌
お待ちしてないよと笑うくちびるが言えない気持ちぜんぶ抱えて #短歌
黙ってればいいのにまた口ひらく光らないままこぼれる感情 #短歌
わがままなひとの輪郭濃くなるよ夕暮れだけがそっと寄り添う #短歌
夜更けには身元引受人の欄ひとつだけ空白のまま風が通りすぎ 短歌
掠れたなかわの名前のひびくなしかわらのいろが空へほどける #短歌
境界を決めた紙片を抱きしめて燃やせる場所をさがす恋です #短歌
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