赤だけを知る子の冬は密やかに光る断面 紙に埋もれて #短歌
ポスターの昭和をなぞる爪の先 うすく剥がれて光るラメ入り #短歌
ちろちろと真水をこぼす龍の背にわたしの影がゆらりと浮かぶ #短歌
羽音等聞こえぬ部屋に灯がともり冬瓜にだけ熱がある夜 #短歌
一体何があったのか傘の骨 まっすぐすぎて雨が逃げてる #短歌
滝しぶき腕の毛だけが光ってるひとりの午後をうすく抱きしめ #短歌
お大事にのあとに残った空気ごと持ち帰る夜 灯のにおいして #短歌
ひとつまた羽根がでている水面には言えないことの音がたまって #短歌
実家だと思ってるのか玄関に靴そろえずに笑って入るな #短歌
運転手が知らないルート行く夜に街灯だけが正気を保つ #短歌
手のひらの冷たさだけが確かでさ 森の沈黙そっと返して #短歌
恥をかかせてやろうと思い指先で紅茶の渦をもうひと混ぜする #短歌
白くなるひとときだけの逃げ道をひとつぶで渡る朝です #短歌
拾い上げ落とすたびにも名を呼んで忘れられない石が増えてく #短歌
しゃもじまでまだ乾いてる手のうちにもしかして炊こうの気が立ちのぼる #短歌
言葉には角を立てずに置いておく笑顔の裏で息をそろえて #短歌
風の手に噴水の芯ゆれながら冬のはじまり街を透かして #短歌
若いって言葉の端にこぼれ出るあなたの笑みの湿度のように #短歌
泡つづく水槽の底うすあかり金目鯛だけ折り返してく #短歌
チャンネルを変える指にもためらいが なぜこの番組に今いるんだろ #短歌
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