さっきまで誰かの髪を撫でていて鏡の奥でわたしを探す #短歌
契約の文字は冷たく並ぶけどわたしと君をほどけなくする #短歌
たかが知れてないことを抱きしめて帰り道には雨がふりだす #短歌
背を丸め溶けてしまえば珈琲の冷たさ苦さに似てしまうだけ #短歌
頑なに変えないものを抱きしめて夜のまんなか灯がひとつだけ #短歌
変わらない漫画がそこにあることを気づくたびまた髪を切られる #短歌
言われたらなかったことになるのかな紙コップにはまだ熱がある #短歌
父の名を看板に残る気配を母の手がお客の来ない昼を撫でてる #短歌
謝った声の余白に風が吹き笑えないまま履きなおす靴 #短歌
そうなんだと受け止めるよりまばたきが一度ふたたび重なって消える #短歌
あのひとのいうあの人がわたしなら水面を裂いてひかりがのぼる #短歌
目覚ましをかけないことの静けさにひとつの未来薄明かりする #短歌
85円あれば届ける言葉たち君の手のひらまだ遠いまま #短歌
湯気のなかひとつの命あゆんでる蛇口の先の蟻を見ている #短歌
冷蔵庫あけて閉めても何もなく無いよりマシと声がしている #短歌
終わらない撮影のあと風だけが服のしわまで記憶している #短歌
花言葉だけが揺れてる午後の窓 あなたがいない日記は白い #短歌
逃げられたら探す気力も置き去りにし窓のひかりがゆっくり沈む #短歌
びっしりと文字を埋めたるアンケート 誠実という痛みを抱いて #短歌
鎮痛剤昨日のぶんがまだ効いて世界が少し遠くでまわる #短歌
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