9月27日土曜日。
午後1時半、長谷にある古刹・光則寺の本堂にいた。
鎌倉動物愛護協会主催の慰霊祭。昨秋亡くなった愛犬ラズリは、ここ光則寺の動物共同墓地に埋葬されている。
冒頭、ご住職が「人間の法要と同じ読経と式次第で執り行われます」と説明され、それに従ってお経が唱えられている間、出席されたかたがたが順々に焼香をしていく。
愛犬の名が記された卒塔婆は半年から1年くらい正面に掲げられ、いっぱいになっていくと順々に新たな卒塔婆に取って変わられる。ラズリの卒塔婆はなくなっていた。それもまたよし。
法要が終わったあと、ご住職に頼んで時間をとっていただいた。
光則寺には動物とは別に共同(埋葬)墓碑があって、自分の墓はそこでもいいかと以前から考えていた。で、昨年の秋、ラズリが眠りに就いたタイミングで一度ご住職を訪ねたのだが、その時は不在で会えぬままになっていたのだった。
今回、ようやく「共同墓地システム」を訊くことが出来た。
住職から私の個人的な考えについて質問を受ける。隠すようなことはないので、淡々と説明する。子どもがいないし、そもそもお墓に懐疑的でもある。しかし、いまの法律では裏山に埋めるわけにもいかない。また、落ち着いて眠る場所があればいいな、とも思う。
今度は私から彼のプライベートなことを聞き返した。彼は3年前にお亡くなりになった父親から住職を引き継いだ。どういう経歴と、どういう動機で今、寺を継いでいるのだろう?
仏教系ではなく、一般の大学を出て、サラリーマンになった。2年が経った頃、ある社会福祉系の本を読んで感銘を受け、著者に手紙で「会いたい」と書いた。すぐに返事が来たので、すぐに沖縄まで会いに行ったそうだ。
で、彼は著者に学びたくなってその大学に学士入学をした。
いい話だ。調子に乗った私は、大学の先輩で沖縄大に職を得た某氏の名を出したら、住職は驚愕の表情をした。なんと住職を魅了したのはその先輩だったのである。
世間は狭い。
そこから話は盛り上がり、住職と私の距離は一気に縮まった。
共同墓地に入る費用は30万円と7年分の管理料とのこと。これが高いのか安いのかわからないけれど、この先自分が突然死をしていきなり電話一本を掛けたとしても、この共同墓地に入ることはできるだろう。転ばぬ先の杖、などと書いちゃうと仏教総体や住職には申し訳ないけど、行き当たりばったりの人生を送ってきた私なので、こういう最終目的地定めも自然な感じがする。
9月28日日曜日。20歳年下の友人で画家の男が鎌倉から聖蹟桜ヶ丘へ引っ越し。
寂しいぞ。
せめて手伝ってやろう。最近体力の衰えが著しいので、足手まといになりそうだけど。
午前10時、彼のアパート(2階建ての2階)に行く。
レンタカー外車から借りたトラックの3分の1くらいが、既に細々とした物で埋め尽くされていた。
とにかく満杯になるまで2階からトラックまで運ぶ。
正午、積み込みが終わった。
これから一緒に聖蹟桜ヶ丘まで行って、荷物を部屋に運び込もう。
そう言ったら画家はびっくしたような顔で、そこまでやってもらうのは忍びない、と言うのだが、乗りかかった船だ。
途中、すき家で軽い昼飯を食べ、新たな住まいのマンションへ。今度は3階建ての3階で、エレベーターなどもちろんない。
順々に荷物を3階へ運ぶのだが、途中でお互いバテた。レンタトラックの返却時間は、八王子営業所8時とのこと。
彼は諦め顔で「明日まで延長するのもいい」と言うのだが、それならとりあえず3階の部屋までは無理でも、ゴミ置き場の横にある四疊半くらいのスペースに荷物を置いて、明日の朝にでもゆっくり自分で運べよ、と私はアドバイスする。せっかく倹約して自力の引っ越しにしたのだから、何が何でもトラックは8時までに返そう。
八王子営業所に着いたらふたりともぼろぼろ。
駅前で不味い油そばを食べ、私はJRに乗った。彼は京王線に乗って聖蹟桜ヶ丘へ。
こういう引っ越しの手伝い経験は初めてかもしれない。
画家はこの世の中のダメっぷりを集約したような男なのだけれど、それはこの私も似たり寄ったりだ。
すがすがしい疲れを感じながら、横浜線各駅停車の薄っぺらなシートで持参した文庫を読んだ。彼も私も前途は暗いけど(笑)、それなりの生きていければいい。
9月29日月曜日。
午後イチで鎌倉警察署に予約をとって、免許更新。
新たな免許は、
1 これまで同様の免許証
2 マイナカード免許証
3 従来の免許証を交付してもらい、マイナンバーカードも免許証にする
の3種類。
料金は当然3がいちばん高いが、私は3にした。
が、待ち時間も3倍くらいかかってしまった。
おまけに免許証交付窓口の人から、「マイナ免許証を更に便利するため、あの機械を使って8t6^あjhtが^3jかうあとあうsぢた……」と意味がどうしてもわからないことを言われ、手続きするようにと勧められる。
が、その機械を操作し始めても、意味がわからないことをしているのだから「はい」「いいえ」のどちらのボタンを押せばいいのかわからない。
ああ、もうやめたやめた。便利じゃないマイナ免許証でいい。
スマホ操作がわからない年寄りの気分で警察署を出た。
明日から山中湖に行って、世間とは隔絶する引きこもり生活をしよう。
校正の分厚い束と少しでも多く格闘し、夜は夜で文学青年きどりで長編小説を読もう。
ここんところ、社会や人との関わりが密となり、それはそれで喜ばしいことなのだろうけど、ぼくは人間力の劣った社会不適応者のふりをして生きるのが合っている。
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