言えぬこと大雨だけが知りていて靴のしずくに夜は深まりぬ #短歌
うつむきて撤去ののちに夜空見ゆ夢ある人の眠りやすらぐ #短歌
追いかけて海鳴りひびくそのなかに緑の影は祈りを抱けり #短歌
つまさきの失せたる痛み抱きしめて夜更けの窓に月を数えぬ #短歌
炎よりのこるかすかな色を問う 灰のこたえは風にまぎれて #短歌
撫でられておだやかになる髪ながし 刀に持つのはわたしのほかに #短歌
呼びかけをひとつ呑み込むくちびるに届かぬ背中揺れつつ遠し #短歌
はるかなり終わりなき海見えぬままきみの眼(まなこ)にうつる別離よ #短歌
風すこしふたりの影を裂くごとく結び目しろき旗はたなびく #短歌
記憶とは角と直線つなぐもの わたしを越えてきみを描けり #短歌
記憶とは蜜のひかりをしてゐたり鱗粉まみれ花のひかりよ #短歌
街に射す太陽ひとつもどりきて電線ゆれる音符は沈む #短歌
夏の陽に影をもたされ僕ひとり焦げゆく事のかたちを残す #短歌
真っ直ぐに光を追えばその先でうつむく花の影となりゆく #短歌
大雨の帷に隠れ吐き出せぬことばは石の沈む音する #短歌
合成の匂いじゃ足りぬ夜の街 本物の苺 胸に突き刺す #短歌
かばんにはわたしの午後とゆれるものバスのきしみにすこし笑って #短歌
メモリーの満ちてこぼれるひかりにはあなたの瞳を映せぬままで #短歌
扇風機まわる音だけきいている りぼんの影が壁にとどいて #短歌
正義とは言葉の外に置かれつつコーヒーの渦くずれてゆけり #短歌
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