夜の底 呼吸の奥でひそやかに夢を追い出す 眠りのために #短歌
キーボード白く光ってうずくまでごめんねだけが宙をさまよう #短歌
ねじ切れた金具の奥に沈む音 向きを持ち得ぬ速度のままで #短歌
古びた手指さす先に川の影 上水沿いを時間が流る #短歌
余震なく香箱ほどく四股の音 猫は確かに地盤を測定 #短歌
赤外の残像ひとつ踊るパン 熱力学の定理をなぞる #短歌
緑葉を裏切るように黄の花は家庭菜園をただ振動す #短歌
台所の設定誤差を思い出す たまの焼きそばは重力として #短歌
花の色 紙の余白に影を置き 文字の途切れは宵の深さに #短歌
誰もしゃべらず湯のぼる音だけ残る それを団欒と名付ける夕餉 #短歌
口唇ははじめからただ境界であなたの声の入り口となる #短歌
ありえないありえたことを信じたい今日という名の裂け目ひらいて #短歌
昇降機群れない光は行き先を増やしながら舟となりけり #短歌
都市の雨 車体をつなぎ列を組む 陰の行列水に沈めり #短歌
白い根のほろりと欠けて月を抱く 渡る世間にうつくしきもの #短歌
ポケットに溶けてしまったチョコの粒 私のこともやわらかくする #短歌
話しても話さなくても夜は来る けもののように影ふくらんで #短歌
甘くないナンがきたのを見つめてる ひとりことのよう ひとりのようで #短歌
敷石に猫がねむってひらく口 この世の中の外へ舌のぞかせる #短歌
自転車の影が結んだ人の輪は星空の下 静かに光る #短歌
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