さよならが歌の余韻にまぎれつつ遠ざかる影青いまま揺れ #短歌
望遠鏡あの頃のままのぞきこみ 今日この頃はまだ始まらない #短歌
青空へ布団を干して手をひらくてつのにおいが少し残って #短歌
占いの言葉ばかりがはしゃいでて名前のない星今日も見落とす #短歌
何でもない動作だったはずが夕暮れの「ごめん」の粒がのどにひっかかる #短歌
雲の上ちらりと光るその視線 静かに並ぶ御一行様 #短歌
動悸だけ先に出発してしまいジャージの裾を握る日曜 #短歌
未知のまま触れてしまった指の先かすかな光をまだ忘れない
さびついたサイロのすそに夜がたまり 暗い取り出し口がそっと息する #短歌
裁ち鋏は布だけを切る運命で紙にふれたら夢から覚める #短歌
この痛みなかったことにと言い聞かせる夕暮れだけが少しにじんだ #短歌
空気だけゆっくり流れ午後が過ぎ洋裁の君を遠く縫い目とめる #短歌
空白を指でなぞりつつ役に立つ 汽車のこない日をそっとたたんで #短歌
黄緑色降りたことのない駅なのにおまつりの終わりが似合ってしまう #短歌
きまりごと守れなかったその朝にひとりの光がそっと差し込む #短歌
明日のことまだ思えないこもる森 過去形だけが指をなぞって #短歌
青いバス小さくうなずき通りすぎそのまま町に残るやさしさ #短歌
ビニールの袋に揺れる蓮の花 地下のホームでととのえる駅 #短歌
駅のなか息を合わせたその足音 5両目だけがまた遠くなる #短歌
雨のなか傘を突き立て歩き出す芽のやわらかさに淡い毒ふえる #短歌
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