まだ帰らない理由もないままに夜だけがぬるく照らしてくれる席 #短歌
水たまりだけがうごいて夜になる 自転車ひとつ光らせながら #短歌
わたしが爪をひそかに研ぐ夜はだれにもやさしくされないように #短歌
ほどけてく気配ばかりを抱きしめてこおり鬼ってなにか忘れた #短歌
重たいのは心じゃなくて夜の方 手ぶらで光を避けて歩いた #短歌
放課後の廊下にのこる声のつぶ ちょ こ れ い と の順で消えてく #短歌
ぬるい風だれにも話しかけられずわたしは今日をやめるところだ #短歌
白い車4台並ぶビルの影 手を引かれてももう戻れない #短歌
PDFでしか残せなかった爆心地 記憶とは編集できる無力さ #短歌
かばんから飴が転げていくようにどちらからでも別れられたね #短歌
未熟って言葉ひとつでゆるされた顔してるからもっと黙って #短歌
忘れろとだれも言わない静けさで事件の写真にまぶたが育つ #短歌
なにも言わなかったのにきみの声だけこんなにしげってしまっていた午後 #短歌
ひかりすぎる午後の海ではすべてが別れの途中だった気がして #短歌
ページからずれたみたいな昼だった 栞の夏にすこし似ていた #短歌
ひつじ雲息をそろえて並ぶ午後 神はきょうだけ眠っておられ #短歌
なにひとつ叫ばぬままで終えた日が肌のうえまで夏をつれてる #短歌
遠くへ行くってたぶんもう言わないね しずかに濡れて光ってた午後 #短歌
手を離す 世界の終わりではなくて静かな午後のつづきでしたね #短歌
ここにはもういないということ 声だけが風に似ていて触れられぬまま #短歌
★
ログインしてコメントを確認・投稿する