ふたりして視線を落とすその先に皮があり夜がほどけていた #短歌
想ったり想わなかったりしながら正確にずれる椅子と椅子との距離 #短歌
目をとじたわたししかいない水のなか 泡に知られる内側のこと #短歌
においだけかすかに残る海風とふれずにすんだ名前のような #短
明日だけたくさんあるの 割れなくて机で転がる胡桃のままで #短歌
その癖もその言い訳も知っていて初夏のとなりで黙ってしまう #短歌
発酵は音を選ばず進んでください名乗らぬ者のほうがおおくて #短歌
君といた たしかな場所がグーグルにのこってなくてちょっとさみしい #短歌
じぶんだけじぶんの影をまといきりまひるの光を背にして歩く #短歌
水底にバスタブがただ置いてあるわたしが開くそのまえの景 #短歌
モネの目がとらえたはずのあの空は冷たいバスの窓にも映らず #短歌
鉛筆の芯をとがらせてからのちに空欄はずっときみのままだった #短歌
こえってね ふれるまえにはふれなくて手のなかに歩くなにかのなまえ #短歌
言いそこねた時刻のあとの風のなか ひとりごとのような「いますか」 #短歌
泣くことをおぼえた部屋の静けさに猫の話がゆっくり灯る #短歌
遠くまで飛べない肩をひらいたらとりとわたしと終わる景色に #短歌
もういない人の話をするたびにやわらかくなる土の気がする #短歌
すくわれるたびに世界が黙って やわらかいものばかりで満ちて #短歌
ばらばらの粉薬から声がする「お前のためじゃなかったのにね」 #短歌
おれのこと忘れてない?と豆がいうそわそわしだす手のひらの午後 #短歌
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