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2021年08月27日17:26

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無常ってなんだ?

 深夜、1時間程度の読書を終えて放心していた。ふと、「横浜メリー」に主役扱いで出ていたシャンソン歌手にしてシャンソン・バー「シャノアール」を長らく経営した故永渡元次郎さんの歌声を聴きたくなって、YouTubeで検索した。ジョルジュ・ムスタキの「私の孤独」をカバーした歌が上がっていたので、じっくりと聴いた。続けて関連動画にあったゲイと思われる有名ではないシャンソン歌手が唄う「私の孤独」も複数、聴いてみた。なお、永渡さんはゲイで、バーを経営する前は立ちんぼで身体を売って糊口をしのぐ生活をされていた。
 それぞれ、歌詞の内容が違う。原詩を自分に引きつけて意訳されたのだろう。シャンソンは日本独特の歌唱が確立されているようで、越路吹雪や美輪明宏らの節回しをベースに、歌詞だけではなく自分が歩んで来た道を愛撫するかのように唄っている。普段なら、歌の途中で次の動画をクリックするような短気的習性があるのだが、最後の最後まで余韻を慈しむかのごとく聴いた。
「Ma Solitude」は中学3年の頃、「チャチャヤング」という深夜放送で小関三平さんという大学教授が好んでしばしば流していたので聞き慣れた曲だった。永渡さんはどうやら生涯にわたってこの曲を唄っていらっしゃったのだが、私もこの歌の旋律が50年にわたって心の片隅に流れているようだ。私はゲイじゃないし、孤独な人生でもないのに、素の自分は性別なんてまったく関係なくて、孤独が最愛の友だちであるような気になって、どうにかこうにかここまで生きて来られた自分の過去が万華鏡のように流れ出したりしたのだった。
 
 8月27日金曜日、朝から猛暑襲来。35度になるような部屋で作業する気が起きないので、まだ薬は少しあるのだが、胃薬と入眠剤を処方してもらいに行きつけの病院へ。歩いて行くのがいやさで、自転車を使った。
 帰宅したら、友人からiPhoneにメールが入っていた。
<昨日は日中は真夏がぶり返したように暑かったね。クーラーなしではとてもやりきれん感じでした。朝方になるとあの高熱も下がっていました。午後には訪問看護も受けました。
今日は午後には訪問診療専門のの病院○○○○○から医者と看護師が来ます。波長が合えば最後の看取りまでやってもらうことになるでしょう。若い先生のようだけど気が合うことを期待してます。(後略)>
 素直な気持ちでメールを返信した。
<午前中自転車で○○病院へ行ってきました。家を出た10時半は既に殺人的な直射日光で、とてもじゃないけれど徒歩は無理です。(中略)
さて「看取り」という言葉を本人自らが言うのは禁句です。使っていいのは、直截的に日々支援しなきゃいけない奥さんだけです。これに近い禁句は「生前整理」とか「生前贈与」という言葉があるような気もします。 (後略)>
 かれこれこの半年、彼の病状は悪化の一途をたどり、ここ1カ月近くはとうとう死に触れる内容が多い。私は自分が何ひとつやましいことがないにもかかわらず、すまんとつぶやいてしまう。で、毎回、出来るだけクソ真面目に返信して、最低限の義務を果たすことができたかな、と思って、彼をというより自分を慰めている。
 永渡元次郎さんの歌を聴いたあとの印象と似通っているのだが、伊勢物語に出てくる有名な歌の下段「はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」、なんだかどんどんと歩いて来ちゃったなあというような思いがあって、ようやく世の無常ってこういうものなのかとわかり始めている。
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