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2020年04月20日20:23

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黒岩比佐子、隔離的精神、大本営発表、車谷長吉……

 かれこれ1年くらい前に黒岩比佐子『忘れえぬ声を聴く』を図書館から借りて読んだ。偶然手に取った本で、黒岩比佐子という名前は聞いたことがあるようなないような不確かな記憶しかなかった。ということは、少なくともたぶん単著を買って読んだことがないのだろう。
 黒岩さんは本の中で、自分は現実にまったく興味が持てなくなったと強い口調で述べられていて、ひたすら古本市に通っては明治と大正の本を漁っているらしい。この本を読んだ時点で、黒岩さんはとっくに亡くなられていて(2010年沒)、しかしブログ「古書の森日記」は閉じられていなくて読むことができたので、彼女がいかに真摯な執筆姿勢なのかがよくわかった。
『忘れえぬ声を聴く』の担当編集者が、この本を編むにあたって以下のようなことを書いていた。

 黒岩さんは明治・大正期の歴史家・山路愛山の「隔離的精神」に倣い、本文中で、「時を隔てて初めて明確に見えてくる」ものがある、と書かれています。しかし、ある出来事から長い時間が経てば、記憶が薄れ、資料が散逸してしまうことも多いでしょう。そうした困難に対し膨大な調査を経て、その時代の空気・空間を再構築のうえ現代を照射するようにして書かれたのが、『パンとペン』にいたる数々の作品だと、編集中にあらためて感じました。

 午前中、『昭和大雑誌(戦中篇)』をぱらぱらと繰っていた。昭和12年8月から20年までの雑誌から抜粋した記事やルポ、随筆を1冊(500ページ)にまとめた貴重なアンソロジー。本の巻頭は三木清の「�愬�知識層に與ふーー愛国心と民族的使命に就いて」で、「中央公論昭和14年5月号」に寄稿された論考である。
<さてここに私が愛国心の問題について述べたのは、今日�愬�インテリゲンチヤにとつてモラルの問題が特に重要であると考へたからである。愛国心は諸君のモラルの基礎でなければならない>
 皮肉にも三木清は治安維持法で検挙され、敗戦直後に獄死している。こんなウヨク思想の持ち主でありながら、というのは笑える。日本政府なんて昔も、そして現代でも薄情なもんだ。
 大本営の海軍中佐がソロモン海戦やフィリピン沖海戦に於ける日本軍の戦況を綴った「撃滅の�探‥�る」という発表(昭和19年12月)なんぞを読んでいると、日本という国はつくづく変わらないなと思う。
 で、黒岩さんのことをなつかしく思ってしまい、Amazonの古本でデビュー作をついポチったのだった。ついでに、と書くと失礼にあたるのだが、以前から同じくなつかしく思い出すことが多い『車谷長吉の人生相談 人生の救い』も注文。朝日新聞の別刷りに連載していた人生相談で、中島らもさんと車谷さんは数ある回答者のなかで双璧をなす巨匠だと思う。このおふたりともお会いしたことがある、というのは僥倖だ。文章を読むととんでもないパーソナリティの持ち主だが、少なくとも編集者と話すときはとても生真面目なかただった。

 自己紹介や手紙の文中で、「私は懶惰な性格ゆえ」、という言葉をしばしば使う。
 尾崎一雄の小説に「懶い春」という題名があるのだが、「懶」の訓読みを知らない。どう読むのか? 
 おこた(る)
 ものう(い)
 ものぐさ(い)
 おこたい春だとおかしいし、まさか3番目じゃないだろう。ということはものうい春?
 意味としては、なんとなくだるーい春(笑)。
 まさに今年の春じゃないか。
 
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