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2017年12月22日21:33

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世界で最も美しい本の展覧会

 昨日は上京して、まずは版元へ。たぶん今年最後の訪問だ。
(大言壮語になるが)なるたけ美しい本を作りたい。本の意図、本文の日本語、装幀、全体を統率する編集力、装幀。毎回、編集している間は自信がある。が、作業が終わりに近づくにつれて自信の半分はなくなる。あまりに装幀や本文を見過ぎて、だんだんとワケが分からなって、客観視が出来ない。他の本と較べたら自分のセンスはマシだ、と思うことはよくあるのだけど、相対評価より絶対評価を優先する、というのが自分の信条なので、比較することで自信は得られない。ろくすっぽ実力もないくせに、気概だけは一丁前ということだ。
 出版社のあと、友人と一緒に印刷博物館で開催中の『2016ー17世界のブックデザイン展』(12月1日〜3月4日)に歩いて行く、友人は既に1度この催しに行っているのだが、私が頼んで連れて行ってもらった。神保町から江戸川橋までは結構な距離だが、友人は都内なら徒歩で移動する健脚家なので、一緒に散歩できて嬉しい。
    ☆   ☆   ☆
「世界で最も美しい本コンクール」および、日本、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、チェコの各国コンクール入選図書を展示。

 本展では、2017年3月に開催された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書とともに、7カ国(日本、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、チェコ)のコンクール入賞図書を加えたおよそ200点を展示します。会場では本を実際に手に取って確かめ、世界最高峰のブックデザインと造本技術を楽しんでいただくことができます。
 今年は「日本におけるチェコ文化年2017」にあたり、「チェコの最も美しい本コンクール」受賞作に加え、21世紀チェコのブックデザインに焦点を当てた特別コーナーを設け、50点の図書を紹介します。
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 展示会場に入った途端、もうこれだけで喜びが湧いてくる。たぶん世界で最も美しい女性200人を集めた会場より、美しい本を集めた展覧会のほうが嬉しいくらいだ。
 15分くらいが経って、ドイツの書籍コーナーで立ち止まってしまった。会場は撮影禁止に加え、筆記具の持ち込みも認められておらず、メモを取りたい人は受付に申し出て鉛筆を借りるということになっている。
 どうしても書き留めておきたい本に出会ったので、鉛筆を借りた。
「Im eisigen weib(氷白の内に)」
 マイナス40度の北極圏にいる白いウサギ、ホッキョクグマ、キツネ、フクロウなどの写真集だ。著者はVincent Munier、値段は68ユーロ。
 写真の印刷が実に美しい。まあ言ってみれば全ページ真っ白な写真集なのだけれど、しっかり陰翳が出ている。説明文を読むまでもなくダブルトーン(2色印刷)ということが分かる。
「Anne Frank/dreaming,thinking,writing(アンネ・フランク 夢を見て、考えて、書いて)」という本があった。表紙を色違いにして6冊用意されていて、アンネ・フランクや住まいや街などの写真をふんだんに入れながらアンネの日記が綴られている。本文こそドイツ語で読めないものの、写真を見ていると自分自身を問われているような気になってくる。レイアウトが実によく整理されていた。この本は2017年度刊で、発行部数は15万部。値段は18.50ユーロ。
 手帳のメモを書き起こしても意味がないのだけれど、こうしてメモにある書名を見ていると、表紙や掲載されている写真が甦ってくる。
 面白い企画本があった。中国で出た本で、漢字が微妙に日本語と違うため意味が半分くらいしかわからないが、昆虫の脚に墨を付けて紙の上を這い回らせ、それを写真製版して本にしたものだ。いったい何を考えてんだか、と私は心の中で笑い出した。で、この本は「世界で最も美しい本コンクール」で入選しているのであった。コンセプトやデザイン、そして印刷技術が実に素晴らしく、日本はこの分野でも既に後塵を拝しているように感じた。中国、イコール、安いのが取り柄なだけの粗悪品を作る世界の工場という認識を、日本人は改めたほうがいい。スマホやパソコンを例に挙げるまでもなく、日本より優秀な工業製品は山ほどある。馬鹿にしていたらいつの間にやら追い抜かれていた、なんてことは人間を長くやっていると誰しも経験することだが、たぶん現在の中国と日本がこれだ。
 あまりに長い間、友人をほったらかして美しい本に耽溺しているのも悪いと思って、適当なところで切り上げた。全体の3分の1くらいを手に取ったところで、彼と一緒に展示会場をあとにして、地下鉄有楽町線江戸川橋駅の上にあるオシャレなパン屋さんの喫茶コーナーに落ち着いた。
 ああ、友人のおかげもあって有意義な一日になった。
 
 本日の夕刊は映画特集だ。3人の評論家が今年のベスト3を挙げている。
 真魚八重子さんという評論家の3作をここに書き写す。

「メッセージ」
「LOGAN」
「パターソン」
 今年は差別を巡り、かまびすしく交わされる言葉を見聞きして、心が疲れてしまった。
 なので映画は静謐な演出によって、壮大なテーマや、死や、本人にとっては自己の喪失ともいえる出来事を描いた作品を選んだ。ひっそりしていても前向きで誠実な姿勢は、慰撫と勇気を与えてくれた(原文ママ)。

 真魚さんのコメントに共感した箇所が複数あった。
 世界と日本の潮流は実に不快で、しかしその不快感に染まる自分というのはさらにイヤで、心がたびたび折れてしまった1年だった。自分はどうしたら幸せな気持ちになれるのだろう。私はこの「幸せ」なる概念をこれまで考えたことさえなかったのだが、ついにこの年になって、心の疲れから解放されたくて幸せとはなんぞや、と考え始めた。
 彼女以外の映画評論家も、希望の光を探して映画を選んでいる。たぶん、どうにも頭が悪くて何も考えていない連中以外、み〜んなしんどい時代になっていると思う。

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