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2017年04月10日22:28

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南風食堂(夏までには開店予定)

 明日は大雨になるという天気予報なので、普段よりやや長めにラズリの散歩をした。歩かせたからと言ってラズリがスリムになるわけではないが、健康上、最低限の運動は必要だ。
 散歩から帰ってパソコンの前に座ったのだが、明日が雨で閉じ込もった一日になるので、自転車に乗ることにした。時計は午後3時を少し回ったところだ。
 桜が咲く前から道端に咲く鮮やかな黄色のタンポポが目に付く。図鑑で調べるまでもなくセイヨウタンポポだ。在来種(カントウタンポポ)は、私の住む一帯から逗子にかけていまだに生育しているらしいので、探してみることにした。在来種の特徴を『鎌倉の自然』で確認してから、自転車に乗った。途中途中でタンポポを見つけては自転車を降りた。が、目に入るのはセイヨウタンポポだ。
 横須賀線の踏切で左右の土手を見てみたら、いろんなタンポポがありそうに思えたのだが、芸能人が線路内に入ったことが話題になったばかりなので、無茶なこともできない。
 このまま逗子の海にでも行こうかな、と思いながら自転車を漕いでいたら、見馴れない光景があった。かつてトヨタの販売店だった建物の前で直径50センチくらいの丸太を割っている男がいた。しばらく観察していると、薪を作っている様子だった。男のすぐそばまで来てわかった。車の販売店からオシャレなレストラン風に内装が一新していた。
 私が驚いているのに気づいた男が薪割りの手を休めて話しかけてきた。
「いずれ店をやろう、と思ってるんです」
 えっ、入口にもう「南風食堂」という店名が書かれているじゃない? と問うのがなぜかぶしつけだと思って、10個くらい並んでいるランタンを指差して尋ねた。
「いろんなランタンが並んでますが、どうやって手に入れられたのですか? 私も探しているんです」
 この質問が心の琴線に触れたのだろうか、彼は自身のことや「南風(みなみかぜ)食堂のプランを丁寧に話してくれた。まだしばらく手を入れたいので、5月の黄金週間にオープンというのは間に合わないらしい。ちなみにランタンは、フリーマーケットを頻繁に訪ねては見つけ次第安価で買ったと言う。ど田舎の金物屋なんかも探しがてら行きますか?と訊いてみたら、「沼田(群馬)の古い金物屋で灯油ランプを見つけたんです」と言って、カウンター前に掛かっていたランプを指し示した。沼田には何度かクルマで行ったことがあるので、一瞬、私は羨望のまなざしになったように思う。
 彼が失礼ですがと断った上で「私と同じくらいの年齢でしょうか? 51歳なんです」と質問した。どうも元会社員で早々と退職したようだった。それも含めて彼と私は共通する部分があって、会話はさらに弾んだ。
 唐突に「このあたりで、日本種のタンポポ見かけたことがありませんか?」と尋ねてみる。が、そんな質問にたじろぐ様子はなく、タンポポやミツバチなどの外来種についての話になった。ただの当てずっぽうだが、この手の話題に乗る男は総じてドロップアウト組かドロップアウト願望が強い性格で、「自分ファースト」なところがある。「♪何がいいとか悪いとか そんなことじゃないんです」(by 加川良)。激しく愉快な気持ちになって、珈琲だけでも入ることが出来る食堂かな? などとおどけて彼に尋ね、オープンしたら絶対に訪ねようと思ったのだった。
 店のなかには立派な薪ストーブ調理器があった。ピザも焼けるしスープも作れる。私が興味深そうなのを見て、「これ、イギリス製なんです」と言いながら扉を一つ一つ開けて見せてくれた。品のいい自慢だ。
 20分近く喋った。写真を撮らせていただいた。5月の終わりに、一度来てみよう。
 店を出てからまだしつこく在来種のタンポポを探して回ったのだが、今日はとうとう見つからず。
 しかし、雑草がたくさん生えた空き地でセイヨウタンポポの完全なる「綿」を発見して、写真に収めた。非の打ち所がない美しき小宇宙だ。
 今日はまるで旅をしたような時間を持つことができた。
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