朝、ラズリの散歩で家を出たら、石段のど真ん中で全長2メートルをゆうに超えるヘビがいた。しばらく静観していたのだが、ヘビは小休止でもしているのか、動いていない。顔を見ていると、5秒に1回、生きている証にビローンと舌を出しては引っ込めている。
困ったなぁ。ヘビの体は石段の端から端まで伸びている。
ラズリも私と同様、ヘビをただ眺めているだけで、すぐに飽きた様子だ。私の出方を待っている。
ヘビを足で蹴飛ばしてどかせる、という乱暴なやり方もあるのだが、ヘビは山の神的な存在であり、巷間聞くところによると執念深いとされている。ヘビのなかには呪術を使える者もいて、私も若い頃、一度騙されたことがあった。京都の郊外にある浅茅が原と呼ばれる村の粗末な食堂に入ったら、店の親切そうな女主人が「日が暮れたのでここに泊まっていきなさい。あなたで今日は店じまいするわ」と言う。私は歩き疲れていて、きつねうどんを食べ終わったところで、店の長椅子の上でどうやら眠り込んでしまったようだった。不思議なことにそれから日の出まで眠り続けたのだが、目を覚ましたら筵状になった草の上に私はいて、そばには私の身長ほどもあるヘビが添い寝していたのだった。
以来、私はヘビに親愛の情を覚えるようになったので、棒切れでヘビをぶっ叩くというような狼藉は働かず、「ごめんなさいね〜」と言いながら、ヘビの横たわる石段をひとつ飛ばしで、降りたのだった。もちろん、ラズリも同じように、軽やかなステップでヘビを飛び越えた。
20分ほど歩いて帰路に着いたが、ヘビの姿は消えていた。もしヘビがいたら今度は動画を撮ってやろう、と思っていただけにやや残念だ。
帰宅後すぐに地元の小中学生が副読本として使っている『鎌倉の自然』という図鑑を広げてみた。
撮った写真と見比べると、アオダイショウだった。草ヘビにしては大きいと思っていたのだが、アオダイショウだったのか。
家の近くでヘビを見るのは、だいたい1年に1回だ。今年はやや早かった。
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