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2016年01月22日20:25

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海の仙人

 歯医者で診察を待っている間、讀賣新聞を読んだ。一面に現金授受大臣の報は載っておらず、二面に比較的小さな記事があるだけだった。人生いろいろ、新聞いろいろ。
 と書いたら、唐突に「えっ? 三種の神器も知らないのか? 常識はずれだな。俺の周りで知らないもんはいない」とむかし言われたことを思い出した。私の周りでは自分も含めてそれがいかなる物なのかを答えられる者は少ないはずだ。少なくとも日本史の入試問題には出ないし、それが神道に関わるのか皇室に関わるものなのかが曖昧なため素通りするに限るような「アイテム」だ。その人はK大卒なので、彼の周りでは常識なんだろう。人生いろいろ、常識いろいろ。
 かかっている歯医者は評判がよくて私も信頼を寄せている。こんな状態になると、唯一の頼みの綱だ。が、私の症状は歯の領域を超えていて、彼ともどもどう対応していいのか先が見えないような状況だ。激痛と疼痛が交互に襲ってくるので、この一週間で食べることが出来た量は大食いの人の一日分といったところ。
 今日は短い小説で感銘を受けた。絲山秋子の『海の仙人』、わずか160ページの文庫だ。
 2時間で読むことが出来るのに、長編3冊分くらいの内容が凝縮している。ファンタジー小説で、ミステリー小説で、恋愛小説で、教養小説。児童書の広告やカバーにはしばしば「10歳から」とか「小学校高学年向き」といった対象が打たれているが、この本は「15歳から」「生きる意味を知りたい人向き」と書くのがふさわしい。
 神様は見える人にだけやって来る。実際、神様に会ってみると、案外と頼りなくて、むしろ人間個々のほうがよほどしっかりしているものだ。しかし我々は神の子である、というパラドキシカルな立場であることも間違いない。定まった運命に翻弄され、喜劇もあれば悲劇もある。思い通りに首尾よく事が進む、という場合もあれば、なぜだと天に唾したい時もある。
 読み終わってまだ5時間しか経っていないのに、いま、再読したいなと思っている。
 粗も目立つし、全体的にはすっぱだし、出て来る人物すべてが哀し過ぎるのに、さわやかな読後となったのは、ひとえに著者の人間観にある。どういう人間観なのか、うまく説明出来ないのだが。人間観を個性と言い換えたら、さらに説明が出来なくなる。本来、人間はファンタジックな存在ゆえに、言葉でなんか言い尽くせないとも思う。
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