mixiユーザー(id:6486105)

2015年06月12日21:23

278 view

キャリアポルノ

 先週土曜日に借りた本2冊を読み終わったので、返却がてら図書館へ。本の貸与は2週間だが、手許に置いておく気にならないほどに下品な小説だったので、早く戻したくなった。
 一昨年あたりから図書館は廃棄処分の本を「リサイクル本」と称して隅のテーブルに並べてある。この図書館にある小説すべてを読む、という目標を掲げた友人がいて、彼によるとときどきいい本が出されているらしい。
 今日は借りる気がなかったこともあって、リサイクル本をざっと覗いてみたら、『キャリアポルノは人生の無駄だ』(谷本真由美著)という朝日新書があって、タイトルの意味が全くわからない。キャリアポルノってなに?
 まえがきを読んでみたら彼女の造語だった。キャリアポルノとは自己啓発本を指している。「3分間で自分を変える方法」「3日で身につけるハーバード式思考術」「5日間でマスターするMBA」といった、書店に行けば必ずと言っていいほど店先のいちばん目立つところに平積みされている本たちだ。
 13ページも割いている長目のまえがきを立ち読みし、面白そうだったので持ち帰ってみることにした。
 キャリアポルノという谷本の造語には、フードポルノという「語源」があった。英語圏ではすでに広く使われていて、初出は1984年に遡るという。食べ物やレストランの料理などを写真や動画で撮って雑誌やネット上で見せ、それをポルノ写真&ビデオ同様、見ている人は見て満足する一連の現象を指す。
 谷本は底意地が悪いのか、上から目線のキャリア系だからなのか、言葉遣いこそ丁寧なもののフードポルノをぼろくそに叩き、そして本題の自己啓発本を分析して作り手や書き手も馬鹿なら読むほうも貧乏で頭が悪くそのくせ上昇志向だけはあって努力は嫌いというどうしようもない人間の潮流、と切れ味鋭く論じている。痛快と言えば痛快、しかし自分も一度はその手の潮流を肯定して、タイトル会議なんぞで「”3日で身につく”より”1日3分で身につく”のほうがよりインパクトがある!」なんて得意そうに話していたこともあって、ビミョーな気持ち。うちに帰って一気読みしたのだが、キャリアポルノよりむしろフードポルノという現象が腹立たしい。夕方、テレビで民放系のニュースを見てると、「美味い」「安い」というお得なグルメガイドと「ニッポン大好き」外国人観光客企画ばっかで、前者は欲望のファストフード化、後者は浅薄な愛国主義化で、いずれも見るも無惨だとしか言い様がない。
 谷本は私より20歳若いのだが、私以上に古風な考え方の持ち主らしく、「努力したくない人、行動したくない人は、娯楽としてフードポルノを楽しんでいれば、何となく自分の手に入ったような気になるのです。テレビやコンピューターの前で、フードポルノを見ながら、栄養バランスの悪いピザやコンビニ弁当を食べて、ブクブクと太っていき、仕舞には糖尿病や心臓病になるのです」(52P)と書く。この調子でキャリアポルノ愛読者をきつく分析して、目に見えない部分での努力や勉強などをすっ飛ばし、簡単に読むだけでかわいい彼女ややりがいのある仕事などを想像し、しかしいつまで経っても欲しいものは手に入らない。仕事は中途半端、技術や語学の勉強はほったらかしで、その根本は怠惰と安直な模倣があるのみ、と喝破している。
「自己啓蒙書とは、見た目はよいが、実は栄養バランスが悪く食べれば食べるほど不健康になるハンバーガーと同じなのです」(54P)
 このあとさらにひどいことを書いているのだが、月1の割でハンバーガーを食べている身としては、そこまできつい表現をしなくても、などと思ってしまった。高飛車な女は、ヤクザより怖い。ただ、この本を読む読者層は、自己啓発書ともハンバーガーともほぼ無縁な人間だと想定しているだろうから、著者と編集者のサービス精神なのかもしれない。
 ちなみにキャリアポルノ大国はアメリカと日本だそうだ。急速な発展を遂げた韓国もアメリカナイズされて、この手の下劣な本が売れているような気もするのだが(^^)//゙゙゙。本書にはヨーロッパ各国の事情も紹介されていたが、アメリカに於ける自己啓発本の売れ行きはイギリスの100倍だそうだ。漠然と感じていたのだが、アメリカの欺瞞性や薄っぺらさや歪んだ宗教観がよく表れた数字だと思う。それに付和雷同する日本。
 易きに流れないよう、自戒したい。
 
3 11

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年06月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930