5月1日、よく晴れた日。
久々にベッドのマットレスを干した。それに伴って、シーツの下に敷いていた電気毛布も片付ける。もし夜半に冷え込む日があればペットボトル湯たんぽで代用しよう。
今日は年に3回あるお寺の大祭。1月と5月と9月。
絶対的信仰心はないのだが、自分の裡には3つの精神的支柱があって、その一つが仏教ではなく「仏教的な世界観」だ。あとの2つはマルクス主義と原始アニミズムで、これらは相互に重なり合う部分集合があって厳密には分かちがたい教えだ。
帰依しているわけではないので、南無妙法蓮華経(もしくは南無阿弥陀仏)で自分が救済されたりご利益がある、と信じていない。だから勤行で念仏を敢えて唱えないよう努めているが、他方、無心で唱えることが出来る人を心底羨ましく思う。これは何も仏教だけに限ったことではなく、マルクス主義信奉者に対しても同様で、党派に属して主義を貫こうという人間は私から遠い。ある時期、自分は組織とか党派に対してあまりに懐疑的過ぎるのではないかと、劣等感に似た思いを抱いていたこともあったし、今でもしばしば自分が「偽物」に思えて仕方ない。
あまりに天気がよかったので、夕方からメインで使っているiMacのOSをバージョン・アップすることにした。かつて、Macintoshの解説本を10冊くらい編集したほどのMacオタクなので、この日から狂喜乱舞の時間が始まった。寝食を忘れてMacと戯れる。
5月2日
踊り出したくなるほどの上天気。
昨夜は深夜2時近くまで、OSのインストールやアプリのバージョン・アップをしていた反動で、昼間は自転車に乗ってラーメン屋に行ったり、海を見に行ったりした。材木座から由比ヶ浜一帯の海岸は、まだ5月になったばかりというのに、海水浴客で溢れ返っていた。
ビキニ姿の白人女性が多く目につく。なかにはうつ伏せになってブラを外している女性がいて、寝返りを打って仰向けにならないものか、としばしの間、気を揉まされた。スタイルのいい女性の背中はラインが美し過ぎてエロくないのが、ありがたいと言えばありがたい、残念と言えば残念だ。漱石がこのような情景を見たら、「みだりに乱れるなかれ、この世はまったく退屈であり窮屈だ」と因縁をつけるのではないか。
午後3時くらいからふたたびiMacの前に座った。今日は日本語入力アプリのATOK最新ダウンロード版を始め、いくつかの有料アプリをインストールする予定にしていた。
ATOKがまだJSーWORDと呼ばれていた時代(たぶん1985年前後)から使ってきたので、かれこれ30年になる。自分のなかでは、漢字かな変換アプリはATOKの前にATOK なし、ATOKのあとにATOKなしで、その根拠はずっと辞書を鍛え、単語登録をしてユーザー辞書を鍛えてきたからだ。旧字も可能な限り辞書に組み入れたり、いまでこそ顔文字辞書はどんな日本語アプリにもあるけど自分で作ってまで辞書に加えてきた。
昨年に買った中古のMacBookではGoogle日本語入力を入れてみたものの、やっぱ長年カスタマイズしてきたATOKのほうが変換しやすい。
5年にわたってメインマシンのバージョンアップをしなかった理由は、PhotoshopなどのAdobe系画像アプリと、Windowsユーザーに於けるWord的存在のAppleWorksというワープロソフトを多用していて、新たなOSでは前者は20万円くらいのアプリケーション・フィーが必要だったり、後者のAppleWorksはアプリ自体が廃番になったからだ。
どうしようか、と悩んで5年が経ってしまった。
で、とりあえずPhotoshopについてはそれに匹敵する高機能画像アプリを入れた。後者についてはMacが作ったpagesやkeynoteを代用することにする。しばらくの間は戸惑うこともあるだろうが、まあこれも一種の愉しみと言えば楽しみだ。
たかだかエディタひとつに、これまで使ってきたJ-editの最新バージョンを買い直すか、無料アプリのiText Express他を使うか、延々試し書きなどをしていると、あっという間に3時間くらいかかってしまう。これくらい真面目に受験勉強することが出来ていたら、いっぱしの研究者になれたのではないか? たぶんネトゲに嵌まったヤツなんかも、もしゲームしている時間を英語学習に充てていたら1年でネイティブ並みになるはずだ、と妙に後悔することがあるのではないか。
ともかく昨日も深夜までiMacと遊んでいた。
今日は憲法記念日だ。ひょっとしたら清廉な現日本国憲法は今年限りで、再来年あたりに憲法記念日は政府の閣議決定とやらで消えているかもしれない。
ラズリとお寺の境内を散歩していたら、観光客が寄ってきてラズを撫でた。「おとなしいね」と言う日本語の発音が日本人のそれとは明らかに違っていたので、「どこから来たのですか?」と日本語で尋ねてみた。
彼はアメリカ系韓国人だった。1950年生まれで、アメリカのCIAで働き、定年を迎えた、という。
彼は日本人が韓国人を差別していることに対してひどく怒っていて、しかし不思議なことに奈良の薬師寺で1カ月かそこら滞在して「得度」したとも言う。どうして嫌いなニッポンにアメリカからわざわざやって来て、彼言うところの「日本の仏教は新羅を通して伝来したものゆえ、韓国のほうが日本より古いです」の奈良仏教を学ぼうとしたんだろうか?
で、安倍に対して怒りまくっているので、私は負けずに反論した。
「あなたは半分間違っている。私も安倍に怒っている。日本人の半分は安倍に怒っている。だから私とあなたは友だちである」
「あなたの日本観は半分間違っている。中曽根が韓国を好きだって? それは100パーセント誤解だ。中曽根以降、教科書のアジア史はどんどん日本本位になって、いまや世界広しと言えどこれほど思い上がった歴史を教えているのは日本と北朝鮮だけになったのだ!」
まあこんな話題を立ち話で韓国人に語る私もどうかしているが、とにかく感情的な韓国人旅行者の強い視線に負けてはならぬと、真っ直ぐ彼を睨みつけるように話をした。今日は憲法記念日だ!
30分近く話をして一区切りついたので、「じゃあ、いい旅をな!」と去ろうとしたら、彼から握手を求めてきたので、握り返した。
「あなた、私と真剣に話した初めての日本人。電話と名前を教えてくれないか。一緒にメシを食べたいんだ」と言われ、これほど怪しい男はいない、と思いつつ、メモ帳に本名とケータイ番号を書いた。これは歴代の右系総理が私にもたらした災厄とでも言うべきもので、政府が正しい歴史認識さえしていれば私は遠慮なく断ったかもしれない。まったく歴代自民党のせいで、私のような良識派はとても苦労する。ちなみに、彼が私に「あなた、良識ある日本人です」と言ったのである。竹島持ってけドロボー、それでチャラにしよな。
で、うちに帰ったらまたMac。他にやることがいっぱいあるというのに。
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