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2026年11月04日05:10

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人類最古のペスト流行はシベリアの5700年前の中石器狩猟採集民に起こった(後):傲慢なソ連の構想は失敗

 シベリアマーモット(写真)という最高の宿主に取り付いたペスト菌は、その後、重要な遺伝子を獲得する。

◎バイカル湖周辺のペスト菌株がまだ持たなかった遺伝子をその後に獲得
 ペスト菌は、数千年前に腸内に棲む近縁の細菌から分かれた。そしてバイカル湖周辺で見つかったペスト菌株には、まだ最も重要な道具が備わっていなかった。「ymt遺伝子」だ。一方、別の研究では、約3800年前の菌からこの遺伝子が確認されている。
 ymt遺伝子は、ノミの腸でペスト菌が生き延びるのを助ける。結果的に、菌を媒介できる宿主の範囲が大きく広がり、ヒトへの感染が起こりやすくなったのだ。
 ペスト菌は粘液の栓でノミの腸を塞ぐことが知られている。するとノミは飢餓状態になり、温かいものなら何でも手当たり次第に、何度も咬むようになる。こうして動物の病気がヒトに広がってゆく。またステンセス博士の研究チームは、齧歯類やノミが減った時期には、ノミの腸をよりしっかりふさぐ型のペスト菌が選択されてきた可能性もあるという。

◎ペスト菌に最良な天候が続いた後に齧歯類が激減するとノミは何にでも飛びつく
 天候がこの仕組み全体を左右している。中央アジアのステップでは、暖かいが暑すぎず、湿潤だが湿気が多すぎない年が数年続くと、ペスト菌は齧歯類の中で静かに増えていく、とステンセス博士は説明する。
 やがて干ばつが起き、齧歯類が激減すると、ノミの数が宿主に対して過剰になる。ノミは過密状態になると落ち着きがなくなるから、この状態に陥ったノミは、家畜やネコ、ヒトといった残された吸血源に飛びつく(絵=ビーター・ブリューゲルのペスト流行を寓意的に描いた『死の勝利』)。
 この微妙なバランスをとらえていたのが、ソ連の寄生虫学者エフゲニー・パブロフスキー(写真)が1939年に提唱した理論だ。病気を土地の性質の1つとしてとらえ、病原体や齧歯類、ノミ、土壌、水、気候は同じ重みを持ち、人間はその枠組みに後から加わった存在と考える。

◎果たせなかったソ連のペスト撲滅計画
 ところがソ連の政策立案者たちは、土地は人間の思いどおりにできると考えていた。自然改造計画である。20世紀の大半にわたって続けられたペスト撲滅計画には、彼らの根底にある考え方が表れていた、とジョーンズ博士は言う。「十分な知識と資源さえ投入すれば、どんな自然環境も、出来事も、土地もコントロールできるという考え」――実に傲慢な思考だ。
 マーモットも、そしてペストもそうした試みを生き延びた。ソ連崩壊の直前の1990年までにはペスト撲滅計画は終了した。その失敗によって、科学者たちの長年の主張の正しさが証明された。すなわち、一部の病気はその土地に根付いたものであり、私たちにできる最善のことは、病気と共存する術を学ぶことなのだ、と。

◎中石器時代に人への感染が明らかになった動物原性感染症
 ペストが人に感染したのは、上記のように中石器時代に遡ることが明らかになった。天然痘やインフルエンザなど動物原性感染症(人獣共通感染症)は、一般に新石器時代になって、人が家畜と濃密な接触をするようになってから、と見られているが、ペストの例から旧石器時代にも動物から人に感染した疾病があったかもしれない。
 人類が動物と接触するようになったのは、旧石器時代に動物の死体を漁っていたことに起因する可能性も無くはない。
 こうした例は、今後もさらに増えてくるだろう。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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昨年の今日の日記:「先史時代の北米大平原を席巻した3種のバイソンの物語(1):史上最大の反芻動物、ジャイアントバイソンは今は亡く」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202511040000/

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