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2026年10月06日12:01

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10/1 逸翁美術館コレクション 蕪村・呉春と茶の湯の名品@サントリー美術館

大学時代、小林一三という名の同級生とデートしたことがある。その時彼から「僕と同姓同名の偉い人がいるの、知ってる?」と聞かれた。
慶應義塾出身、現・阪急阪神東宝グループの創業者で、明治・大正・昭和の実業界・政界に大きな足跡を残した人。宝塚歌劇の創設者で、数寄者「逸翁(いつおう)」として名高い。

大阪に逸翁美術館があるのは知っていた。行く機会がなさそうなので、この展覧会は嬉しい。サントリーの創業者の長男と逸翁の次女がご夫婦であるという縁もあるのかもしれないが、相互の所蔵名品を交換展示しているのなら、なんともありがたい企画だ。

古筆と経巻、中世・近世・近代の絵画と工芸、それにもっとも点数が多いのが茶道具。近世絵画は、与謝蕪村と呉春中心。
チラシを見た印象では「地味!」の一言に尽きたが、呉春の《白梅図屏風》がどうして見たくなった。果たして素晴らしかった。
希少なもので驚いたのが、古筆、経巻の類。中世、近世の絵巻物も初めて見るものばかりだったし、茶道具もそのゆかり、エピソードが興味深い。逸翁がその才を認めてパトロンとなった鈴木華邨はたしか、小原古邨の師匠。可愛らしい犬と兎の絵で、後期は猫と鳩に展示替え。小原古邨は数年前にブレイクしたから、鈴木華邨もぜひ回顧展を望みたい画家だ。逸翁の仕事、人となりが窺える資料もある。

前後期入れ替え40点ほどと場面替えがある。写真撮影は基本不可だが、10点ほどOKあり。かなり空いています。


https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2026_3/index.html
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逸翁美術館は、阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者として知られる近代日本を代表する実業家・小林一三(1873〜1957)の雅号「逸翁」を冠して、昭和32年(1957)に大阪・池田市に設立されました。人々と美を分かち合う姿勢に貫かれた5,500件におよぶコレクションは、逸翁の多方面での豊かな業績と進取の気風に富む人間性を反映し、古筆切、茶道具から与謝蕪村・呉春の絵画に至るまで実に多岐にわたります。今回は、その選りすぐりの名品が一堂に会する待望の展覧会となります。


第1章 古筆と経巻
《古筆手鑑「谷水帖」 二十四葉》
益田鈍翁が自ら収集した古筆切を他鏡にしたもの。伝紀貫之「高野切」や伝小野道風「本阿弥切」「石山切」など

《関戸本古今集切》平安時代 11世紀
三蹟のひとり藤原行平の筆(ただし、伝)

《白描絵料紙金光明経 巻第二断簡(目無経)》 建久3年(1192)
下絵の人物(白描)に目や鼻が描き込まれていないため、通称「目無経(めなしきょう)」と呼ばれている。この画像ではわかりづらいが、経文の下に明らかに絵巻物の途中が描かれており、女性は顔が輪郭のみで、まだ目鼻が描き加えられていない。
これは、後白河法皇が進めていた絵巻物の制作が、建久3年(1192年)の法皇崩御によって中止となり、その下絵(画稿)が写経の料紙に転用されたのだって。
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《伊勢物語下絵梵字経断簡》鎌倉時代 13世紀
ベースは、白描の伊勢物語絵巻で、素人が描いたものかもしれないが、現存最古の伊勢物語絵のようである。その上に、後から梵字の陀羅尼経がびっしりと木版で印刷されている。
↑の目無経と同様、反故紙の再利用とも取れるが、個人の追善供養の意味合いがあるのでは、とのことらしい。これらの類は前にも見たことがあるが、面白いなぁ!
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第2章 中世・近世の絵画と工芸

《芦引(あしびき)絵》 室町時代 15世紀
室町時代の代表的なBL物語。展示は、比叡山の僧侶がとある屋敷で稚児をみそめるところ。
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《熊野本地絵巻》 室町時代 16世紀
天竺の話、五衰殿の女御が他999人の妃の嫉妬を買い、処刑のため山中に連れて行かれるところ。その忘れがたみが日本に渡って熊野権現となるらしい。現存最古。絵が素朴で可愛い。
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《奈良絵本「ささやき竹(雛牡丹姫物語)」》江戸時代 17世紀
とある夫婦の娘に恋をした別当が、邸宅に忍び込み、寝ている夫婦の耳に「ささやき竹」と呼ばれる竹の筒を押し当て「毘沙門天の告げである。娘を別当の妻にせよ」と偽の神託を吹き込む。夫婦は信じて、娘を言われた通り大般若箱に入れて別当に届けるが、途中で貴族に救い出される、何も知らない別当が箱を開けると、そこから暴れ牛が飛び出すというお話。
細長い竹を通して、別当が寝ている夫婦にささやく絵が何とも面白いな。奈良絵本だから金をふんだんに使った豪華な装丁。
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《露殿物語絵巻》江戸時代 17世紀
美少年露殿が、吉原と六条三筋の遊郭、それぞれの太夫と三角関係の絵物語。他に作例がない唯一らしい。
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狩野光信《豊臣秀吉画像》桃山時代 16世紀
豊臣大明神の元となった高台寺の秀吉像の下絵。紙が継ぎ足されているのは、一番似ているのを選んだためとか。つい最近畠山美術館で狩野山楽の秀吉像を見てきたばかり。あちらはかなり盛っていたな。
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《花鳥蒔絵螺鈿洋櫃 付籐編外櫃》桃山時代 17世紀
スペインのヒロン家夫人の注文品。何か訳あって輸出されなかったようだが、藤編の外櫃がおしゃれで素敵。桃山時代にこんな輸出品があったなんて。
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第3章 蕪村と呉春 近世諸派の絵画
呉春といえば、円山応挙と並んで、円山四条派を確立、近代京都画壇の礎となった人だが、応挙に比べて見る機会が少ない気がする。逸翁コレクションは、与謝蕪村とその弟子・呉春が充実と聞いた。正直、与謝蕪村は府中市美でバッチリ見たから、今回は呉春を楽しみたいなぁ。

与謝蕪村《奥の細道画巻》安永8年(1779)
府中市美で見た山形美術館蔵の《奥の細道図屏風》と同じ頃に描かれたらしいが、やはり絵巻ものの方が右から左への時系列が楽しめて見やすい。蕪村さん、芭蕉が好きすぎて、奥の細道をたくさん描いているんだね。
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与謝蕪村・呉春《「桐火桶」句・陶淵明画賛》天明4年(1784)2月
蕪村亡き後、弟子である呉春が蕪村の遺作の句稿に画と賛を添えて販売、蕪村の娘の結婚資金に充てた。これを「嫁入手」というそうだが、いい話。描かれた人物は陶淵明で、蕪村が敬愛していたという。
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呉春《三十六歌仙偃息(えんそく)図巻》江戸時代 18 〜 19世紀
偃息とは横になって休むこと。三十六歌仙がくつろいでいる様子を描いているのだが、小野小町が折り紙を折ってたり、斎宮女御は寝転んで本を読んでいたり。男たちは、輪っかを鼻と耳にかける変な遊びをしたり。後半も見てみたい。
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呉春《松下鯉図》寛政12年(1800)

蕪村逝去後、呉春は応挙に弟子入りを志願する。ただし、応挙は、呉春がすでに優れた絵師であると認め、弟子にはせずに共に励みましょうと言ったとか、は有名な話。鯉は応挙のそれにそっくり。
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呉春《岩上孔雀図》江戸時代 18世紀
孔雀も応挙が得意とし画題だが、離れ離れになっていた上記《松下鯉図》と対幅であることがわかった。もともと俳画を描く蕪村に師事した呉春、応挙に比べて筆数を減らして、事物を捉えようとしているところが好ましい。
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円山応挙《嵐山春暁図》安永9年(1780年)
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春ののどけき景色にうっとりした後、照明をおとした部屋。そこに広がる幻想的な世界にしばし息を呑む…
呉春《白梅図屏風》江戸時代 18世紀
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今回、これだけを目的にやってきた。そして、それは間違いではなかったなぁ。
浅葱色に染めた平織りの布を貼り、その上に応挙が得意の「付け立て法」で白梅の枝を描いている。小さな白梅は絵具をことさらに盛り上げることはせず、薄闇に浮かび上がっている。「余白が語る」とでも言ったらいいかな、余白にしみじみとした詩情を感じるなぁ。
静かに夜が明けていく風情は、師・与謝蕪村の辞世の句「白梅に明くる夜ばかりとなりにけり」の世界観を描いていると言われている。感動。
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展示室は階下へ移る。ここで「明治・大正・昭和 逸翁・小林一三の生涯」を紹介するコーナー。
逸翁は、近代数奇者であるけれど、飄逸な文人画、俳画を愛し、茶器に洒落た銘をつけたり、頓知な書を書いたり、遊び心のある人だった、と知る。
小林一三《夢嫡茶》
「むちゃくちゃ」と読む
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経営する阪急百貨店食堂で、ライスだけを提供し、備え付けのウスターソースをかけてもらう「ウスターライス」を販売したとか。お金がなくても百貨店に来て遊んだ思い出を後々まで大切にしてもらいたいからという意図。いい話。


第4章 逸翁の茶道具

《五彩蓮華文呼継茶碗 逸翁銘「家光公」》元時代 13世紀
割れたり欠けたりした別々の焼き物を繋ぎ合わせた「呼継(よびつぎ)」の茶碗。江戸幕府で継ぐのが難しいとされる3代目を上手に継いだ徳川家光になぞらえて、逸翁が「家光公」と銘をつけた。こういうユーモアのセンスが数奇者には必要なのね。
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寄合茶杓 如心斎銘『淀舟』 逸翁追銘『乗合船』》千利休 千少庵 千宗旦 久田宗全 如心斎 
桃山〜江戸時代 16 〜 18世紀
寄合茶杓とは1本の筒(または箱)の中に、複数の人物が削った茶杓が一緒に収められているものを言う。その状態の茶杓を、表千家七代家元如真心斎は「淀舟」と銘し、逸翁が「乗合船」と追銘したと言う。
茶杓の良さなんて私にはまだまだ全然わからない世界だけれど、世代を超えた茶人たちが作った茶杓が一緒にあっている様はなんだか微笑ましいね。

《草花文緑ガラス小壺(茶器)》イタリア 18世紀
逸翁は、海外工芸品ばかりを取り合わせた大茶会を開催した。古きにとらわれず新しいことに挑戦して楽しむ人となりが伺える。
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第5章 近代芸術家と逸翁

鈴木華邨《菜花狗児図》明治39年(1906)
菊池容斎門下で、弟子に小原古邨がいるのだが、あまり知られていない画家。数年前大阪で回顧展があったのだが、東京巡回はなし。渡辺省亭のような繊細で美しい花鳥画を描くので見たいなと思っていたところだったので、嬉しかった。応挙の犬に倣っているね
小林一三が高く評価していたらしい
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寺崎廣業・鈴木華邨《月下兎図》明治39〜40年(1906〜07)
月を寺崎が、兎を鈴木が描いた合作。これもいいな。
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11月8日まで(前期は10月12日まで)
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