さよならも言えない坂道滑り台 空は青くてあおざめていた #短歌
万歳という降伏をしてしまえ どうせ地面はすぐそこにある #短歌
あの世とは死者の場所ではなくなるし思い出になる直前の場所 #短歌
さくらんぼを最後に残す母を見て溶けるアイスの匂いを聞いてる #短歌
知り過ぎたことより忘れられずいる言葉の棘がまだ残ってる #短歌
朝の鍵まわす音まで似ていても違う物語ひらいていくね #短歌
シャッターの隙間に朝が差し込めば鍵盤みたいな光が伸びる #短歌
英雄の物語にはならなくても果物を剥く手は確かに生きる #短歌
やわらかな桃のしずくを受けながら名前のない日を大事に生きる 短歌
痕跡を消そうとするその動作こそ存在していた証拠になる #短歌
空っぽの椅子に陽だまり置くようにゆっくり今日を座らせている #短歌
消し跡のざらりとしたる白さかな 愛の抜け殻そこに置いてく #短歌
本当ならひと言くらい言えたのに言わずに終わる日もまた普通 #短歌
優しさとためらいはよく似ていてどちらも皿の端に残される #短歌
磨くたび少しやさしくなるような月を抱えて眠るスプーン #短歌
圧縮ファイル解凍されるみたいにね 内臓たちが定位置へ戻る#短歌
解放は思想ではなく重力に従うことなら始まるのかも#短歌
触れないでおこうと決めた指先に小鳥みたいな風がとまった #短歌
「あ」から「ん」まで降る雨みたいにして君の窓辺を明るくしたい #短歌
生きる意味なんて難問より先に手を振ることが成立している #短歌
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