ねえ始まりって触れたら終わるのかな だからこのままにしておこうか #短歌
誰でもないままでいられる時間だけ さくらの中でやさしく息をする #短歌
まだ呼ばない無花果の名を置いたままぼくらの季節だけが先に行く #短歌
やわらかいところと規定されています わたしはそこに該当します #短歌
さびしさが壊れぬことで成立する そういうルールを信じてしまう #短歌
未完であることに触れてしまうたび影との距離がやさしくなる #短歌
未完成のまま守られている殿が世界の端でひかり続ける #短歌
あと少しで咲くはずだった約束を春の途中でそっと見ている #短歌
そのままのかたちで持ち帰るために手のひら少しひらいて歩く #短歌
使わずにとっておいたらこの夜もきっとなにかに替えられたのに #短歌
帰るって決めたら終わってしまうから書きかけのまま触れる黒板 #短歌
触れる前からわかってしまうからそれはもう触れたことだけが同じ #短歌
いいよって言って消えてくわたしです やさしさだけが少し残った #短歌
ラベルってつけたら急にほんとになる だからこのままふわっとしてよ #短歌
影のほう先に行かせてしまったらあとから来るのがわたしになるね #短歌
まばたき前に触れてしまうからことばは遅れて水にほどける #短歌
世界のせいにしていい夜があるってそれだけで朝が来る理由だ #短歌
もう居ない声をすこし持て余して耳だけあったかくて困ってる #短歌
春巻かない理由は別にないけれど包まない日のやさしい空気 #短歌
星の音が内側でまだ続いてるそれでも星はやさしく遠い #短歌
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