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2026年03月30日20:35

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映画「金子文子」と横浜界隈散歩

 3月30日月曜日、晴れ。
 朝10時に家を出た。
 JR関内駅から徒歩10分にある社会派映画館「横浜シネマリン」で「金子文子 何が私をこうさせたか」を観る目的だ。珍しくチケットは前もって座席予約をし、電子決済をしている。月曜日は1300円のサービスデーとなっているので、満席の可能性もあるかと予想したのだった。
 伊勢佐木町を歩くのは久しぶりだ。
 コンビニでホットドッグを買った。
 上映15分前に着いたら、館内は既に客で溢れ返っていた。ほどなく入場し、指定された座席に座り、映画予告が始まる前に粗末なランチを済ませた。と、隣に座っていた私と同年代の女性がバッグから手作りと覚しきサンドイッチを取り出して食べ始めた。午前11時45分始まりという中途半端な時間帯ゆえ、みんな考えることは同じだ。
「金子文子」は少なくとも(私の通う)大学のサークル棟内ではローザ・ルクセンブルグと並ぶ歴史上の”アイドル”だった。とともに、サヨク界隈からなぜか私に「観よう!」という推奨が複数舞い込んでいて、呼応せざるを得ない情況でもあった。私は厳密に言うなら、サヨクではなくアナキストなんだが、まあそれはさておき、誘いがなくても観ただろう。
 退屈の対語が何なんかわからないが、金子文子の怒りが終始観客に向けられているような熱量があるため、冷ややかに観たら平板な展開ゆえに退屈な映画の部類だと思えるのだが、時間の経過がわからなくなるほどスクリーン上の金子文子に最後まで魅せられ続けた。大逆事件……、皇太子(ヒロヒト)暗殺を企てんがため爆弾を入手しようとした、という”とが”で検挙されたわけだが、未遂でさえない。事件ではない事件でどうして死刑(のちに恩赦で無期懲役)となるのか。金子文子の怒りは自身の有罪判決に対してではなく、権力者によって確立されているに過ぎぬ天皇制と日本人の日本史観(とりわけ朝鮮人虐殺)に徹頭徹尾向けられていた。私は金子文子のような過激さは持ち合わせていないのだが(現実の生活では)、映画の半ばあたりから彼女の虚無主義とアナキズムに染まり始め、金子と我が身の共通点が多々あることをはっきりと自覚した。
 開き直った女性は、世間智に長けた男より遙かに怖い。厳密に言うと、この形容は性差別だが、男性は心が弱いものだ、と昔から思ってきた。
 金子文子は”転向”することなくクビを括った。同時に逮捕された朴烈は(この映画ではまったく示されなかったが)転向し、敗戦後まもなくに釈放されて1974年まで生きた。
 映画が終わって外に出たら、暖かかった。
 関内とは逆の方向に歌丸師匠が暮らしていた横浜橋商店街界隈がある。うん十年ぶりに行ってみるか。確かご自宅近くにある神社の石柵(玉垣)に師匠のお名前を見たような、いや、夢で見たような。
 燦々と輝く太陽の下なので、いかがわしさは薄れているのだが、横浜シネマリンから横浜橋商店街まで、途切れることなくぽつんぽつんと風俗店があって、しかもそれが素人にはよくわからない「専門店」であるのが笑える。M性感サロンとか、リフレッシュマッサージとか、人妻クラブとか。
 10分ほどで横浜橋商店街に着いた。持参していたマイボトルのコーヒーを一口飲んで、自分に「お疲れさん」と言っておいた。
 入口近くにベトナム人用の食料品店があったので、入店。即席ビーフン4個入りパックを買った、250円。リュックの容量に限度があるので、これだけだ。
 さ、もう戻ろう。
 と思いつつ、ちょっと大回りをしたら日本3大ドヤ街の寿町に行ける。寿町に沿って流れる中村川に桜の木はあるだろうか。
 不幸な生い立ちがルサンチマンへと昇華した金子文子をずっと想っている。 
 寿町に自分のノルタルジーがあるわけでもないのに、どうしてもドヤ街を歩きたい気分が強い。
 寿町に至る道路沿いには多数の高層マンションや雑居ビルが林立していて、住んでみたいという欲が高まってしまう。35歳で東京から鎌倉に越したのだが、その時、横浜市中心部(中区)の家やマンションを数軒内覧したことがあった。もし横浜に越していたら、その後のライフスタイルは変わっていただろう。
 寿町はもはや昔の寿町ではない。が、鉄筋コンクリートのドヤは多数あって、バックパッカーたちの宿も兼ねる時代となった。労働者の街、というイメージはもはやない。
 あっちこっちにご年輩たちがいて、今日の午後は暖かいものだから、春がもたらしたような笑顔がたくさんあった。よかった、凍死しない季節を迎えた。
 JR石川町駅に着いたら1万歩を超えていた。
 気持ちのいいハイキングが出来た。
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