飛ぶ前の羽のほうがきれいだと思ってしまう夜もあるんだ #短歌
だれもまだ知らない皿のぬくもりで台所だけやさしくしてる #短歌
座るたび椅子の深さが変わる夜 あとから来たと影と並んだ #短歌
だれもまだ触れていない沈默がコップの水を少し揺らした #短歌
夜ふかしの棚にひとつの影としてぼくの静止画そっと並んだ #短歌
だれもまだ拾っていない夜があり光だけ少し先に歩いた #短歌
こぼれ火を拾うみたいに指ひらき夜の机で明日をさがす #短歌
理由ってたぶんあとから追いついてきみの掌だけ先に熱いよ #短歌
湯けむりにほどける肩のぬくもりを月より先に抱いてしまった #短歌
机にはまだ置き場ある気がしてる 来ない通知のための明るさ #短歌
言葉よりやわらかい土さわってる 芽の眠りにも順番がある #短歌
消印のない夕暮れを折りたたみことばの外へ歩いて帰る #短歌
消しゴムの雪を机にあつめたら字のくしゃみまで聞こえそうだね #短歌
それ春だよって誰か言った気がしてる 舌の先だけもう知っている #短歌
朝というだれのものでもない光 先延ばしごと湯気にしてゆく #短歌
置かれた声まだ言葉にはならなくて名の重さだけ空気に触れる #短歌
指先にまだ冬の名が残りいて春を呼ぶ字をそっと書き足す #短歌
カーテンをひらけばすぐに朝が来て知らない顔で今日が始まる #短歌
こぼれない夜をすこしだけ掬って影の温度を机に置いた #短歌
消えないでそこにいてくれと思うとき闇の輪郭だけがやさしい #短歌
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