なにもないことの明るさスクロールし あなたの今日に既読を置いた #短歌
口にせずわけあうまえのやさしさがフォークの銀にひかりを残す #短歌
すり減ったぶんだけ増えるまなざしをだれにも言わず結ぶ靴紐 #短歌
ちゃんとある夜の重さを抱くように空の椅子にも影を座らす #短歌
切ったあと受話器の底にのこる息 あなたのいない形をなぞる #短歌
いいことはわけあうためにあるみたい あなたの分もちゃんと残して #短歌
悲しみは何度来たっていいように小さな椅子をここに置いてる #短歌
次こそと地図を拡大してみても空白のままあたたかい指 #短歌
指先にふれれば消える光でも夜を選んだことだけ残る #短歌
それぞれの水の深さを知らぬまま同じ光に手をひたしてる #短歌
洗濯機まわし忘れたシャツだけが朝になっても責めずに濡れて #短歌
水槽のガラスに触れる指先であなたじゃないと知ってしまった #短歌
取りこんだシャツの重さに気づくときいないはずの体温がある #短歌
流し台 水で流せばこの皿のさびしさだけが残って光る #短歌
電源を切ったあとの部屋のなか 湯気だけがまだ生きてるみたい #短歌
玄関にそろえたままの靴たちが帰ってこない気配を知ってる #短歌
触れぬまま壊れぬように灯を伏せて朝の名前をまだ呼べずいる #短歌
掬うたびひかりを失くしていくものをそれでもまだ持っていたくて #短歌
まだすこし夢のほとりにいていいよ 起きなくたって朝は逃げない #短歌
向かい合う席に置かれたコップ越し同じ曇りを見ている夜更け #短歌
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