つきだして舌にふれたる春の糸ほどけるように空は遠のく #短歌
指先に残ったままの夜があり飲みきれなくて朝へ持ち越す #短歌
春なのに多分雪降る気配して手袋のまま君を待ってる #短歌
サブスクで聴けない曲を持っている きみの沈黙だけが再生 #短歌
言葉より遅れて落ちる影ひとつ 夜の器に水を満たして #短歌
やすませた指の形で夜を知る 消えないものがそこだけ光る #短歌
応答のかたちを持たぬ水の上 揺れた分だけ深くなる夜 #短歌
祈り終えた椅子のぬくみを置いたまま 誰もいない名を呼んでみている #短歌
ポケットの底でぬくもりになるまで名前を持たず光っていてね #短歌
傘を閉じた手のひらだけが知っているひとり分だけ軽くなる夜 #短歌
改札の手前でほどける横顔に遅れて今日のわたしが追いつく #短歌
ほどけない夢のつづきを撫でながらまだ体温を確かめている #短歌
踏まれないままの白さのとなりには名前を呼ばない時間が積もる #短歌
握りしめたままの光を置いてゆく 祈りのかたちで眠りに帰る #短歌
改札を抜けても続く余白には触れなかった声だけが残る #短歌
まだ誰のものでもない部屋の隅 水を与えて明日を待ってる #短歌
呼び止める声を持たない明るさがわたしの影を先に連れてく #短歌
見上げれば同じ高さの空なのにわたしのほうが遠ざかってる #短歌
渡されたあとの静けさでわたしの内に満ちる輪郭 #短歌
白い皿 触れなかった理由ごと 醒めていくほど遠くなる顔 #短歌
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