林檎剥く手を止めぬまま目を伏せて沈默だけが近くなってく #短歌
秒針の声にまぎれて息ひとつ 値段ない夜胸にしまって #短歌
目を閉じてページになると思ったら夜が返事をくれなかったよ #短歌
忘却に身を預ければ風は澄み獲物の名さえ土に還れる #短歌
告白のあとにひらいた傘の音 濡れない距離で雨がやさしい #短歌
ゴミ捨て場 隅で揺れてる透明に海を忘れた夢が残って #短歌
湯の底で重さを脱いで目を閉じる 宇宙はきっと肌の内側 #短歌
相槌を色で残して閉じたあと好きは静かに行間で鳴る #短歌
だいじょうぶ棺はいつも近くあるめがねの奥で朝が待ってる #短歌
夢かなと聞き返さずにうなずいた 朝はそういう電話が多い #短歌
じゃあ根を言わないままの人たちがまだ会話中の顔をしている #短歌
囲むほど家族は丸くなっていて火でも言葉でもないぬくもり #短歌
ボリュームを絞る指先やわらかく夜の斜面に影を敷いてく #短歌
たとえばさもう詩なんだよって思う 運ばれていく途中が好きで #短歌
手を振ればまたねが先に歩き出す 早い夕暮れ追いつけなくて #短歌
レジ袋揺れる白ねぎ一本で暮らしは今日をちゃんと生きてる #短歌
求愛ってそういうことか ペン先が言葉を好きになってく感じ #短歌
鏡ごと夜を脱ぎ捨て振り向けば笑顔の練習終わっていたね #短歌
迷いもまた雨の軌道と知る夜にあなたの強さ少しやわらぐ #短歌
撫でる手に泣きはほどけて湯気になる 苺は赤く眠りへ煮える #短歌
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